昨日の「紅白」は良かった

 去年のことを振り返るのは未練がましいけれど、つい夕べのことなのでご寛恕願いたい。「NHK紅白歌合戦」のことである。基本的には、例年、あまり見ることはない。せいぜい、石川さゆりが「天城越え」を唄えば聴くくらいで、そうでなければ、本を読んでいたほうがいいからね。
 しかし、今年は満を持してテレビに向かった。しかし、夕食の際に飲んだ黒霧島が効いてしまって、午後9時頃までうたた寝をした。残念ながら「マル・マル・モリ・モリ」ではワシャの意識を覚醒させることはかなわない。
 ワシャを胡蝶の夢から引き戻したのは椎名林檎だった。「カーネーション」という曲だ。なんでも、NHKの朝のドラマの主題歌らしい。いい曲だった。そして椎名の声もいい。ブレスが聞き苦しい平原綾香とは雲泥の差だった。
 その後、森進一の「港町ブルース」。この歌の2番のサビの部分、「♪〜みなと〜みやこかまいし〜けせんぬま〜♪」は三陸の被災者の皆さんにどう届いただろう。
 KARAは可愛かったので、意識は遠のかなかった。Perfumeも、のっちがかわゆいのでなんとか踏ん張った。しかし、TOKIOで気を失ってしまう。
 次に意識を取り戻したのは、レディー・ガガだった。やはり、いい曲には反応する。この人、とてもレベルの高いアーティストだと思う。そして、本当に日本のことが好きなのだということが解かった。ありがとう!レディー・ガガ
 長渕の石巻ライブも良かった。しかし、和田アキ子で気が遠くなり、嵐で意識を失った。下手な歌手のところで見事に眠ることができるとは、ワシャはなんと都合のいいヤツなのだろう。
 そして最後に目を覚ましたのは、松任谷由実である。「春よ、来い」であった。これは、イントロで覚醒し、唄い出しで、すでに泣き始めていた。
 いかん……今も、歌詞を思い出していたら、涙がにじんでしまった。悲しくてないているのではない。あの、寒い被災地で、被災者の皆さんが、この歌をどう聴くだろう。思いを東北に馳せたら、思わず感動してしまったのである。

「淡き光立つ にわか雨〜」
 静かに歌が始まる。まだ、寒さが残る東北のどこかの町に、むらしぐれが通っていく。残雪がそこここに見える。その中に沈丁花が高い香りを放っている。
「それは それは 空を越えて〜」
 香りは空気ににじみ、空のかなたのあの人にとどくだろうか。春は、まだまだ遠く、愛をくれたあなたの存在も遠ざかってしまった。
 でも、まぶたを閉じれば、あなたの笑顔が、そして声が、よみがえってくる……。
 素晴らしい詩だ。そしていい曲だ。
 ユーミンの歌を聴いて、どれほどの人が、失われし人のことに想いを馳せたことだろう。未だにみつからぬ恋人の声を聴くために、何度、まぶたを閉じたことだろう。

 一時でもいい。全国津々浦々の日本人が、あの歌を聴いて、優しい想いを抱いたと信じたい。

 う〜ん、NHK、大トリはSMAPではなく、間違いなくユーミンだったね。まぁ、それでも、近年、まれに見る上出来な紅白だった。また、被災地に行こうと思った。