マンタの天ぷら

 ワシャは、年中、書庫の掃除をコショコショとやっている。昨日は芸能人関係の複数の書棚を整理していた。そこで、松任谷正隆『マンタの天ぷら』(二玄社)を掘り起こしたのだった。ゲゲゲ、この本、1997年発行の本である。20年前じゃないの。いつどこで買ったかは覚えていないけれど、ユーミンの夫だということは知っていたので、「どんな旦那なのだんな?」と思って購入したのは間違いない。ユーミンの曲「中央フリーウェイ」で《片手で持つハンドル 片手で肩を抱いて〜》いるのは正隆氏のことである。
 正隆氏、昨年の9月に「週刊新潮」で不倫をスクープされた。お相手は30代のマネージャーだったそうな。そのニュースを聞いたとき、それほど驚かなかった。それは正隆氏が女性に優しいというか、緩〜い方だということは結構有名な話で、『マンタの天ぷら』のあとがきの中にもそのことが書いてある。
《今回のタイトルを決めるにあたって、二玄社は「マンタ」というのに特にこだわったみたいだ。》「マンタ」というのは松任谷氏の若かりし頃のあだ名だ。だから本の表紙もマンタ(オニイトマキエイ)である。「松任谷」から「マンタ」か、「正隆」から「マンタ」かと思いきやご本人はこうおっしゃる。
《僕は幾度となく反対したにも関わらず、(出版社は)最後の最後まで譲らなかった。きっとニックネームの由来を知らないからだろう。僕も表紙のような「マンタ」であればそんなに反対しなかったかもしれない。でもニックネームなんてそんなにカッコいいところから出てきはしない。僕の「マンタ」は「マン」が「タ」なのだ。》
 昔、このエッセイ集を読んだ時に正隆氏に悪い印象を受けなかった。軽い感じの素直な人というイメージを持った。だから去年の9月の時も、奥さんが「ユーミン」だし、ご本人は「マンタ」だからなぁ……と一人苦笑をしたものである。
 本のタイトルの「天ぷら」をつけた理由がいい。
《別に謙遜するつもりはないけれど、僕はとんでもない天ぷら野郎だ。嘘つきで衣が厚くて中身が小さい。安物の天ぷら、としなくてはいけないな。》
 正隆氏が安物の天ぷらなら、ワシャなんかその天ぷらから落ちた揚げカスだな。中身も何も入っていない。スカスカで汁に浸かるとブヨブヨになる。う〜む「タヌキの天かす」ですな。