巽聖歌(たつみせいか)の「たきび」
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20111201
の余韻がまだ脳裏に残っている。そんな引きずりもあって、本を読んでいてこんな冬の俳句を見付けた。
「落葉焚いて 葉守りの神を 見し夜かな」
なかなかいい句でしょ。これは、文豪芥川龍之介の句である。「葉守りの神」などという言葉が、句の中にすんなりと織り込まれている。
ちなみに「葉守り神」とは、樹木の守護神のこと、柏の木に宿るのだそうな。日中、芥川は庭で柏の枯葉を焚いたのかもしれない。炎を見ていると目が離せなくなる。火に魅入られるとでも言うのだろうか。だから、その夜、芥川の夢の中に柏の神様が訪れたのであろう。
驚くべきことに、この句は、芥川龍之介が10歳の時に作ったものである。そう言われれば、句にただようあどけなさもうなずける。それを含めて計算されたものだとすれば、ううむ、天才というのは凄いな……。
ワシャが10歳のころに作った句などは、「落葉たき おいもごろごろ おいしそう」だった。天才と凡才では、これほどの差がでるものなのか(苦笑)。
宮城音弥『天才』(岩波新書)にこんなフレーズがある。
《一般に知能指数の高い者は、知的に早熟である。》と前置きをして《天才の早熟は昔から話題になっている。ダンテは九歳でベアトリーチェに詩を書き送り、タッソは十歳で文章を書き、パスカルとオーギュスト・コントは十三歳で偉大な思想家になっていた。》
もちろん、芥川龍之介も文章の天才であり、早熟であり、知能指数はきわめて高い。「天才である」という前提にたてば、冒頭の句をひねるくらい朝飯前ということだ。