オーランチオキトリウム

 コラムニストの勝谷誠彦さんが、「たかじんのそこまで言って委員会」などで、喧伝していた「石油を精製する藻」が現実味を帯びてきた。他の出演者には「また勝谷さんがオーランチキチキの話を始めた」などといじめられていたが、どうやら本格的に動き出しそうだ。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111029k0000e040057000c.html
 記事の内容は、「IHI NeoG Algae(アイエイチアイ・ネオジー・アルジ)」という会社が、湖や河口などに生息する藻「ボトリオコッカス」から、「A重油」に相当するという油をつくったというもの。「IHI NeoG Algae」はここを見てね。
http://www.neo-morgan.com/INeoG/

 さて、記事の中にも出てくる「ボトリオコッカス」である。正式名称は「ボトリオコッカス・ブラウニー」と言う。要するに光合成によって炭化水素(ボトリオコッセン)を精製する緑藻のことで、バイオエタノールの有力が原料になる。記事にこうある。
《次世代バイオ燃料の有望な原料として、油成分を作り出す藻類に期待が集まっている。国内外で研究競争が激化し、大手民間企業が出資を本格化。東日本大震災の被災地に研究拠点を置き、復興につなげようとする動きも出始めた。》
 まさに勝谷さんが言っていたとおりの流れになってきたようだ。

 筑波大学の渡邉信教授は『藻類バイオマス』(医学評論社)にこう書いている。
《Botryococcusは年間約120t/haのオイルを生産する潜在能力をもっていることから、1000haの培養地から年間約12万t(約75万バレル)のほぼ純粋な炭化水素が得られることとなる。》
 これを前提として教授は、2010年9月の段階で、日本全国の耕作放棄地38万haを、「ボトリオコッカス」の培養池にすれば、日本が消費する石油の1/5が賄えると言う。
 いいですか、2010年9月という時期を記憶しておいていただきたい。後で重要な意味を持ってくる。
とにかくこの時点で教授はそう言っていた。そして上記の文章はこう続く。
《もし、オイル生産効率を1桁上げることができれば、耕作放棄地の半分を使うだけで、わが国の現在の石油消費量をまかなうことができる》

 2010年12月、朝日新聞にこんな見出しがおどった。
《生産能力10倍「石油」つくる藻類、日本で有望株発見》
 渡邉教授のチームが沖縄の海で「オーランチオキトリウム」を見つけたのである。三宅久之さんや宮崎哲哉さんにいじられるこの「オーランチキチキ」は、実は「ボトリオコッカス」の10〜12倍の炭化水素を作る優れものであることが分かっている。
 渡邉教授が直前に出版した本のなかでいみじくも言われた「オイル生産効率を1桁上げることができれば……」が現実味を帯びてきたわけだ。
 その上、3.11の大震災で、海水をかぶって使いものにならない田畑が、岩手、宮城、福島の沿岸には、それこそ山のようにある。
 これは、天が日本に与えた藻うた(「与えたもうた」と打ったらこう出た。縁起がいいので修正しない)チャンスではないか。災い転じて福となす、大震災で塩水に浸かった荒野になっている東北沿岸部を使って、藻類バイオマスを始めようではないか。そのために2〜3兆円の税金を投入してもいい。いや、もう一桁多くてもいい。なにしろ、東北復興どころか、日本の明るい未来どころか、世界のエネルギー構造まで変えかねない大プロジェクトなのだから。
 ゆけ!オーランチオキトリウム。世界の状況を一変してしまえ。