オーランチオキトリウムへの熱い想い その1

http://www.asahi.com/science/update/1214/TKY201012140212.html
 12月15日の朝日新聞に「オーランチオキトリウム」の名前が初めて掲載され、その概要について説明があった。
《球形で直径は5〜15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。水中の有機物をもとに、化石燃料重油に相当する炭化水素を作り、細胞内にため込む性質がある。同じ温度条件で培養すると、これまで有望だとされていた藻類のボトリオコッカスに比べて、10〜12倍の量の炭化水素を作ることが分かった。》
「オーランチオキトリウム」は藻である。正確に言えば「微細藻類」と言う。上記文中に出てくる「ボトリオコッカス」の一種で極めて炭化水素生成能力が高い。
 そもそも、藻類からエネルギーを得ようと考えて研究を続けている国は多い。例えばアメリカは600億円を投資しているし、イギリスはじめEU各国で藻類の総合利用に関するプロジェクトが進められている。日本でも筑波大学神戸大学東京農工大学に研究グループがあるのだが、政府が阿呆なのでささやかな補助金しか得られずに四苦八苦しているのが現状だ。それでも日本の科学者たちはがんばって研究をつづけ、欧米が研究の主軸に据えている「ボトリオコッカス」の10倍の能力を持つ「オーランチオキトリウム」を発見した。これは凄いことである。

 具体的な話をする。一時期騒がれた植物由来の燃料、いわゆるバイオ燃料である。トウモロコシや大豆を主原料として精製するわけなのだけれども、オイル産生量(1ヘクタール当たりの年生産リットル)がトウモロコシで172リットルだった。この数値は、現在の石油需要のすべてをトウモロコシ由来のオイルで賄うとすると、238億4260万ヘクタールの耕地があればいいということだ。238億と言われてもピンときませんよね。
 簡単に言えば、現在の全世界の耕作地面積が19億8200万ヘクタールなので、その14.3倍ほどの面積が必要ということで、これは火星にでもプランテーションを造らないと賄えない。つまり、トウモロコシバイオは、石油の代替エネルギーにはならないというか、論外なのである。
 もちろんトウモロコシよりも効率のいい植物は存在する。アブラヤシである。これならば地球に存在する耕作面積の内で全世界のエネルギー消費を賄える。ただし、それでも全耕作地の41%を必要とするので、これですらまったくの論外と言っていい。
(下に続く)