連日連夜

 今、仕事のほうが佳境に入っている。そのためバタバタ走り回って一日が過ぎていく。まぁバタバタするといっても、基本的に仕事は打ち合わせや調整などで、会議室に入ってしまえば、椅子に座っているだけなんですけどね。走っているのは、会議室から会議室に移動するときである。資料や筆記用具を抱えて、時には、それが紙袋二つになることもあって、スーパーで買いだめをしたオバサン状態で、階段を駆け上ったり……。

 夜も連日忙しい。10月18日の日記
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20111018/1318889321
にも書いたけど、今、地元の商店街が頑張っている。その商店街の一角で生まれたこともあって、その街に知人友人も多い。顔見知りの商店主たちが夜な夜な集まってくるので、ついつい期間限定オープンの模擬居酒屋に毎夜顔を出すことになる。
 だから、この一週間というもの、夜はずっと同じメニューで過ごしている。いくら駅前商店街の名物食材といっても、さすがに4日目には少し飽きた。

 週の半ば、旧知のシンクタンクの幹部とたまたま話をした。その人は、中部圏の経済情勢や企業の内部事情にも詳しい。その人がこんなことを言った。
「まだ限定的なのだが、海外から日本に工場をシフトする企業も出ている」
 今回のタイの洪水でも明らかになったのだが、やはり海外では災害時の対応ができていない。また、治安も当然のことながら日本より悪く、政情も必ずしもいいとは言えない。工員の質もはっきいって良くないという。いろいろな点を考慮していくと、「国内回帰が採算的にも合う」と考える企業家が現れても不思議ではない。そういう流れが拡大していくことを願っている。

 やはり、これも週の半ばの話。元気な中小企業の社長と話す機会を得た。この人、いかにも叩き上げの社長といった感じの人物で、声はだみ声、雰囲気は「横山のやっさん」である。その人が言う。
「おう、ワルちゃん、オレはな、銀行と中小企業は持ちつ持たれつだなんて思っていないんだ。こっちが調子のいい時はいいさ。金を借りてくれだの、手形を割り引いてくれだの、頼み込んでくる。しかし、一旦、傾きだしてみろや。途端に掌を返して知らん顔さ」
 そりゃそうですな。
「だからさ、オレのところに出入りしている銀行員にも言ってやったのさ」
 なんて?
「オレとオマエ(銀行員)は、持ちつ持たれつじゃないんだ、とね。オレが調子のいいときにオマエらは寄ってくるが、会社が傾けば、逃げていくだろう。ということは、オマエに頼まれて、金を借りるのも、手形を割り引くのも、みんなオマエの成績になるわな。そうすりゃぁお前は出世して同期の中でも一番で支店長になるかもしれない。そうすりゃ給料だって差がつく。生涯賃金を考えれば、どれくらい得になるのかわかるか」
 ふむふむ。
「そんな話をしたことがあったわけよ。そうしたらそいつ頭のいいヤツだったんだな」
 ほう。
「次に来る時に、手土産を持ってきた。虎屋の羊羹とかじゃないんだ。たこ焼きだぜ。ただのたこ焼き」
 ワシャはたこ焼きのほうがいいですけどね。
「これ皆さんで食べてください、とか言ってテーブルの上におくわけよ」
 なかなかはしこいではあ〜りませんか。
「それが、そのたこ焼き、オレの娘のやっている店のたこ焼きなんだ。それを素知らぬふりをしてオレの前に出しやがった。可愛いじゃねぇか。こいつぁ手形割引してやらなきゃなんないわけよ」
 ううむ……。
「困った時に助けてくれとはいわない。だがな、恩は忘れちゃいけない。そう言ってやると、くそ真面目な顔してさ、何度もうなづいてたなぁ。そいつな、この間、同期で一番に支店長になったとさ」

 めでたしめでたし。