播磨灘物語

播磨灘物語』は司馬遼太郎の名作である。しかしタイトルの「播磨灘物語」は、スケールの大きな司馬作品とは違ってまことに小さな物語である。

 

 ここ3日ばかり西三河を留守にしていた。それは仕事の関係で業務調査に出かけていたからである。まず訪れたのが淡路国最西端の門崎だった。門崎は、ちょうど鳴門海峡を塞ぐ扉のように鳴門海峡に突き出た門の岬で、別名を鳴門岬と言う。

 そこに立地している道の駅「うずしお」が高収益を上げていることを聞きつけて、その経営状況や組織の有り方、あるいは自治体との関係性などを確認するために訪問をした。もちろん現場を見るということが重要であることは言うまでもない。けっして鳴門の渦潮を観に行っただけではないのであ~る。

 詳細は、資料を宅配業者に委ねてしまったので、また後日、まとめをするけれども、なにしろ辺鄙な田舎の道の駅、それも大して大きくもないところが、いくら渦潮という観光資源があるにせよ年間十数億円の売り上げを叩き出しているのは注目に値する。なにしろ年間売上数千万というまったく機能していない道の駅もあるんだからね(泣)。

 

 そして関門海峡を渡り、四国に入った。阿波国である。徳島駅前で宿をとっていたので、チェックインして、早々に街の探索に出る。

 ほほお……徳島市、25万ちょっとの人口だと聞いていたが、いやいやなかなか都会でしたぞ。西三河のワシャの町とはわずかに数万人の差でしかないが、さすが蜂須賀26万石の城下町である。文化の気品、歴史の風格をもった町であった。

 八百屋町、東船場町、籠屋町など、いかにも江戸風の名前である。そんなところを見て歩いたが、こういった所が「コンパクトシティ」には向いているのではないか。中心市街地を流れる新町川沿いの居酒屋に入って、夕食兼軽く一杯ということで、鱧に舌鼓を打ったのでした。

 

 翌朝はやわらかな雨。蓮の葉に水の玉がみるみるできて零れていく。そうだ、徳島は蓮根の一大産地だった。蓮の葉にうずめられた農地の中を高徳本線は讃岐に向かって走っている。

 高松について、一服もせずに、丸亀町商店街にもうダッシュ。バブルと国の愚策で壊滅状態となっていた商店街を立て直した話を当事者から直接にうかがう。地方都市の商店街の奇跡の復興をどうしても見たかった。

すでに基本情報はネットなどで揃えてはあるが、まだ詰め切れていなかった。商店街を知るためには「その商店街にある書店に行け」、街の取材が大好きなワルシャワはこれを鉄則にしている。もちろん丸亀商店街にも老舗の書店があった。「宮脇書店」である。ここに飛び込んで書店員に「丸亀商店街について書かれている書籍をみんな集めておいてくだされ」とお願いして、集めてもらう時間を使って商店街を歩きにゆく。A街区からG街区まであるのだが、それらを1時間ほどかけてつぶさに見て回った。

書店にもどると、2冊の本が用意されていた。今ここで紹介しようかと思ったのだが、これも別便でホテルから送ってしまっていて、現在、ワシャの手元に届いていない。ご紹介できないのが残念じゃ。

それを購入して、丸亀商店街の百十四銀行の前にあるベンチで本を読み始める。そのベンチはちょうど木陰になっていて、涼しくて、久しぶりにいい読書タイムだった。小一時間で付箋を20枚ほど貼り終えて、昼食に讃岐うどんをたべて、商店街振興組合の扉を叩いた。そこから3時間あまりみっちりとレクチャーを受けて、議論もし、こちらが次から次へと核心部分を突いて、質問を繰り出すものだから、講師のほうも熱くなってきて、最終的にとても打ち解け、本音をお聴きすることができた。講師には、買った本にサインももらったんですよ(笑)。

この「サインをしてもらう」というのが取材では大切で、付箋のびっしり打ってある本を差し出すと「おまえはそこまで事前学習をしてきたのか?」と、講師の垣根がぐっと下がるのだ。

不勉強な視察にはそれなりの、観光目的の視察にはおざなりの、そんな対応をすることは、前の仕事で200件ほどの視察を受けてきた人間としてよく解っている。だからこそ、取材側が理論武装をして臨む。そうすると迎撃する方も真剣にならざるをえない。真剣勝負は本当に楽しいのである。

 同行した他のメンバーも、初日の視察では、「双方の型どおりのあいさつ」やら「質問の順番」にこだわっていたのだが、どうやらワシャのやり方を理解してくれたようで、2日目は自由にやらせてくれた。ほとんどワシャが口火を切って、核心をズバズバ質問し、最終的なまとめもしてしまうというやり方を尊重してくれた。ありがとう。

 結局、質問・議論が長引いて、商店街の見学時間はなくなったが、レクチャー前に回っておいたので、その点は問題がなかった。商店街から高松駅までは、ほとんど駆け足のような状態で、なんとか岡山行きのマリンライナーに間に合ったのだった。

 

 まだまだ続くのだが、ちょいと長くなった。続きはまた明日のココロだ~。