必死の現場といいかげんなマスコミ その1

 3年前まで会社で防災の仕事に携わっていた。その間に新潟中越地震能登半島地震、新潟中越沖地震などが立て続けに起きて、そのすべての現場に入っている。ときにはボランティアとして、あるときは支援部隊の一員として。
 あるいは災害に関しての勉強もしてきたつもりだ。例えばジャーナリストの日垣隆さんの今はなき「サイエンス・サイトーク」というラジオ番組に災害社会学の権威である東京大学の廣井脩さんが出演されると聞けば、東京まで出かけてお話を伺った。
 また、神戸で1週間にわたる災害の研修があると知れば、ヘルニアの手術を止めてでも参加したりしてきた。
 災害関連の本も読んだ。その量は生半可な量ではない。今でも本棚一本を埋めている。
「やるときは一所懸命にやらなくっちゃ」
 と、防災担当を延べ6年ほど従事した間に、地域の防災については手を尽くしてきたという自負がある。
「これだけやったんだからこの地域は大丈夫だ」
 と確信もしていた。
 たまたまワシャの会社は西三河でも内陸にある。だから、津波に関しては心配がない。でもね、津波に関しても勉強しましたぞ。研修でもカリキュラムの中に必ず津波の項があり、地震発生時の対処の仕方を教示してくれる。
 東京の研修会にも、神戸の研修会にも東北の災害担当の方々が何人もお見えになっていた。今回の地震報道で名前の出てくる自治体の担当者の方もご一緒している。その方たちも必死に勉強していた。リアス式の地形をもつもっとも津波に脆弱だといわれる地域が自分の守るべき担当区域なのだ。そりゃぁもう必死の形相で講師に対峙していたのを覚えている。あの方も、お国に帰られて、力を尽くして防災対応をされたに違いない。
 しかし、この惨状である。人間の力というものはことほどさようにちっぽけなものでしかなかったのか……。今回の東北の状況をみると、我々の無力さを思い知らされてしまった。
(下に続く)