ドキュメント、ワルシャワの結婚式祝辞 その2

(上から続く)
 少し時間をさかのぼる。
 披露宴が始まる前のことだ。会場スタッフがワシャのところに寄ってきて祝辞の打ち合わせをした。段取りの説明の後に、「お時間はどのくらいになるでしょうか?」と、きくから、ワシャは素直に答える。
「16分くらい、興にのれば20分かも」
 その答えに、会場スタッフは明らかに引いた。はっきりと困惑顔を見せてこう言う。
「乾杯の前ですし、その後のスケジュールも詰まっておりますので、もう少し短めに……」
 このスタッフ、甘いな。 
 確かに彼の言うとおり、来賓祝辞で16分も話をされたら後段の予定が全部ずれ込んでいく。だいたい来賓のあいさつなど面白いものではないですからね。こればっかりは短い方がありがたいに決まっている。
 でもね、そのことを顔に出してはいけない。そう思ったとしてもプロなら笑顔を崩さずやんわりと「4分程度でお願いします」と依頼すべきだろう。
 まぁ、彼の困惑も理解できないでもないので、「わかりました。なるべく短めにまとめます」と言っておいた。全然、そんな気もないのに。

 さて、祝辞の続きである。少し硬めにご両家に対し祝意を述べ一旦言葉を切った。そこで一拍おいて、雛壇の方に向き直って、しげしげと新婦を見る。そして感慨深げにこう言った。
「いやー、それにしても綺麗だ」
 そしてポケットからハンカチを出して、
「先ほどの結婚式で、バージンロードを歩く新婦を見て、思わず泣いちゃいました」
 と、ハンカチで目頭を押さえた。ところが、その仕草がわざとらしかったんでしょうね。会場がどっと沸いてしまった。
 およよ、つかみはOKではあ〜りませんか。もうそこからは止まりませんでした。
「新婦の会社での仕事が事業仕分けに似ている、だから新婦の顔が蓮舫に似てきたような……」
 で大爆笑をとった。
(下に続く)