浜野矩随(はまののりゆき) その1

 夕べ、第131回「安城落語会」があった。ライブの落語は初めてだという友だちを誘って出かけた。
 出演は、楽太郎改メ六代目三遊亭圓楽、「安城落語会」では常連の瀧川鯉昇(りしょう)、その弟子の鯉斗(こいと)である。もちろん圓楽が来るというので、会場の寺の本堂は立錐の余地もないほど大入りとなった。どうだろう400人もいただろうか。さすが笑点圓楽の人気は大したものだ。
 でもね、ワシャのお目当ては圓楽さんではなく鯉昇さんなのである。この人の脱力感ただよう高座は一度聴くと病みつきになるんですね。
 
 まずは前座は鯉斗がつとめる。鯉斗とは1年前のこの落語会以来である。う〜む、あまり上達していない。相変わらずマクラは元暴走族ネタで粗さばかりが目立った。噺は『転失気』。
 鯉昇は相変わらずだらーっとした感じで始まった。
 まずは、会場の隅っこにいたマスクのご婦人を見つけたんでしょうね。「去年はどこの会場もマスクをつけているお客さんばかりで、笑っているのかどうなのかよくわからなかった」と始める。そのうちに出身地の浜松の話になって、そこから餃子の話につないでいく。
「え、今日は古典はやらないの?」と思わせるくらいにマクラが長い。それにどこで古典につなげていくのか、皆目わからない。「このまま駄話をして終わっちゃうのかな」と思いはじめた頃、ようやく語り口が改まった。しかし、主人公が「餃子屋」である。残念ながらワシャの記憶の中に「餃子屋」が主人公の古典落語はない。「新作か?」とも思ったが、噺が進んで、その餃子屋の二階に居候が転がり込んでいるというところまでくると「おっと、このシチュエーションは……」と思い当りがないでもない。そのうちに居候が廃寺の住職を務めるという話になって、「ああ『こんにゃく問答』だ」と合点した。しかし、餃子で落とせるのかなぁ。
 鯉昇、50分たっぷりと語って、餃子をこんにゃくに置き換えて落としてしまった。でも、餃子とこんにゃくでは形、大きさに違いがあり過ぎで無理があったような気がする。もとのこんにゃくでやったほうが良かったと思う。
(下に続く)