浜野矩随(はまののりゆき) その2

(上から続く)
 そんなことをいうと鯉昇さんがマクラで言っていた「落語なんてぇものは娯楽ですからね、そんなに真面目に考えちゃぁいけません」を思い出した。でも、純正の『こんにゃく問答』が聴きたかったなぁ。
 さて、トリの圓楽さんである。鯉昇さんより4つ年上なんだそうだが、「笑点」でお見かけするとおりお若いですね。もちろん話法は安定していて上手い部類だろう。しかし、まだまだ枯れていない。よっぽど鯉昇さんの方が枯れている。頭も含めて。
『今おもしろい落語家ベスト50』(文藝春秋)では、圓楽(楽太郎)25位に対して、鯉昇16位と勝っている。確かに鯉昇さんのほうが面白い。
 圓楽さんの噺は『浜野矩随(はまののりゆき)』という人情話である。師匠の五代目が得意な演目だった。
http://www.youtube.com/watch?v=onq30wFy0kQ
 途中までしか見られませんが、これです。やっぱり先代の方が上手いねぇ。『浜野矩随』という噺は、職人が先代を乗り越えて名人になっていく物語なので、そこに名跡を継いだ自身を重ね合わせての熱演だったが、結局、枯れが足りなかった。タレントとして若さを維持するのも大切なんだろうが、こと落語に関して言えば円熟味が加わってナンボという世界である。枯れた圓楽が見てみたい、そんな思いに囚われた。

 会場を出ると生暖かい南風が吹いていた。今夜あたりから荒れそうだ。せっかくの見頃の紅葉が散ってしまうのが惜しいなぁ。