生垣の美しい花

 昨日、久々に病院に行く。午前中に外せない会議があるので、診療開始一番に診てもらわなければ、会議に間に合わない。だから、自転車を早朝から必死に漕いでいる。
 自転車で風を受けて走っていると少し肌寒い。でも気持ちのいい朝だ。とくにこの道は地元で「フラワーロード」と呼ばていて、沿線住民の意識も高く、歩道沿いには一年中、季節の花が植えられ目を楽しませてくれる。ワシャはあいにく不調法で、花を見ても何が何だかわからない。でも、美しいなぁということだけは充分に理解できる。一軒のお宅などは生垣の下から小さな紅い花をつけた叢がはみ出している。それがずっと列になって続いているんですな。花に道案内をされているようで、これはこれで楽しい。

 はみ出した叢を眺めていて昔の話を思い出した。
 花好きな先輩がいて、その人は小さな庭中に花を植えていた。道路に面したブロック塀にも花籠を吊るしてあって、いつも季節の花が咲き誇っていた。その人の家は、ワシャの通勤路にあったので、何年もの間、毎朝、楽しませてもらっていた。
 それがある日突然、花籠が撤去され、白々しいコンクリートブロック塀がむき出しになっていた。今までこんなことはなかったので、びっくりして先輩に尋ねてみた。
「町内会長が変わってね、その人が家にやってきて、僕の家のフラワーバスケットが道にはみ出しているから撤去しろって言うんだ」
「はみ出しているっていっても側溝の上じゃないですか?」
「僕もそう言ったんだけど、側溝も公共用地だって言うから」
「そりゃそうだけど……」
 結局、側溝の上であっても通行の邪魔になるということで、先輩は花籠を撤去することになり、町の人々は花を愛でる貴重な場所を失った。
 ルールでは町内会長が正しい。しかし先輩の花籠は通行の邪魔になっていなかった。誰にも迷惑をかけていないし、多くの人々が望んでいることでもある。それでも町内会長が「善」で先輩は「悪」なんだろうか。
 なにを言いたいかというと、尖閣諸島の問題で、事件の映像をユーチューブに流した人間のことである。ルールでは「守秘義務違反」であり、仙谷鼠は、厳罰にも処しかねない勢いだ。おおむね識者の論調も「罪は罪」といった情勢でまとまっている。
 しかし、本当にそれでいいのかなぁ。仙谷鼠の思惑を外して、映像がユーチューブに流れた時、皆さん、わずかでも爽快感があったのではないですか。少なくともワシャは「良くやった」と思いましたぞ。
(下に続く)