暑い夏の思い出 その3

(上から続く)
 ワシャのチームには、ホー君やカッパ崎がいる。前述した大学生やオバサンもワシャと同じチームになった。カッパ崎のつてで米太郎やポン吉もいつの間にかメンツに入っていた。
 集団ができて秩序が生まれるとある種の上下関係ができてくるんですな。もちろん、ワシャのチームは仕切り好きのワシャがリーダーとなって、伝令と世話係をうまく使い、仕事をてきぱきと片付けていく。なんといってもトラック入庫の規則性が判っているのだ。積荷の少ないトラックがくると10人が全力で突進していく。監督も他のチームの人間も「あいつら何をはりきっているんだ?」と思っていたんだろうが、その行動には理由があったんですね。
 それに、やらされていると思いながらだらだらと作業をやっていると疲れがたまってくるんですな。「ホイホイホイホイ」と掛け声をかけてバケツリレーの要領でテンポよくやると、楽しいし、作業が捗るんですね。
 他のチームが積み下ろしをボソボソとやっている横で、手っ取り早く作業をこなして、うちのチームだけは休憩しているということが、チーム員には格別うれしいようだ。監督も、仕事はきっちりとやっているので何も言わない。 
 作業効率が上がってくると、各校の番長たちも素直なものである。「米太郎くん、ポン吉くん、パレット持ってきて」と命令すると「はい!」といい返事をして2人で荷積み用の木製のパレットを運んでくる。
 結局、ひと夏、番長たちをあごでこき使って楽しいアルバイトを終えたのだった。おかげで、番長たちと顔見知りというか、奴らにしてみれば、ワシャはリーダーだよね。だから、私鉄の駅前で出くわしても「リーダー」とか呼ばれて、格好の悪い思いをしたものだ。
 それでもね、カッパ崎は、その働きを冷凍食品会社の監督に認められて、高校卒業後にその会社に就職したそうだ。あいつなら根性はあるしこわもてだし、きっといい監督になっていることだろう。

 入道雲を見上げていたら、そんなことを思い出した。今日も暑くなりそうだ。