暑い夏の思い出 その2

(上から続く)
 悪いのが集まっているとはいえ、アルバイトの頭には会社の監督がついている。これがごつそうなオジサンということと、やはり問題を起こせばおいしいバイトから追い出されてしまうので、学校や街とは違った秩序があって、番長グループも妙に大人しい。手持ち無沙汰になると、くわえ煙草で近づいてきて話しかけてくる。
「あんた、どこの学生?」
 うわっ!O工業のカッパ崎じゃないか。こいつ、この間まで傷害で停学喰らっていたのに、いいのかこんなバイトをやっていて……。ワシャは驚きをなんとか隠して、返事をする。
「え?オレ?オレはA高校のワルシャワ
「A高校ね、はいはい、オレのことは知ってる?」
「カッパ崎……くんだろ」
「知ってるねぇ」
 ヤニで真っ黒な歯を見せてうれしそうに笑うんじゃない。こんなのに目をつけられたらたまりまへんで。

 アルバイトも1週間が過ぎて、集団の中にある種のシステムが出来上がってくる。監督に気に入られて監督の伝令のようなポジションにつく要領のいい大学生や、やたらみんなの世話をしたがるオバサンやらが台頭してくる。それはそれでワシャらにはありがたいことではある。
 それに1週間もやっていると、ワシャはトラックの入庫にある規則性があることに気がついた。おまけにトラックごとに積荷の大小がかなりあるんですな。最初の頃は、トラックが着くと、闇雲にみんなと一緒に群がっていたのだが、だんだんそれが効率の悪いやり方だと判ってきた。
 また、おおむね1台あたりの作業員数は10人程度が適当な人員がということも判ってくる。10人以上で作業にあたっても余剰人員はあぶれてしまいかえって効率が悪い。トラックは多いときにはプラットホームに4〜5台並ぶので、40人のアルバイトなら自然に4チームに編成されてくる。
(下に続く)