暑い夏の思い出 その1

(登場人物)
A高校のワルシャワ
A高校のホー君(ワルシャワの友達)
各高校の番長たち
その他大勢

 入道雲が立ち上がっていた。頭部が太陽に照らされてギラギラと輝いている。その背景は深いブルーだ。そんな空を見ていたら昔のことを思い出した。
 それは高校2年の夏だった。ワシャが少々やんちゃだった頃の話だ。夏休みなんか学業はそっちのけでアルバイトばっかりやっていた。だからアホになったのね。トホホ。
 夏休みに入ったばかりのある日、ワルガキ仲間のホー君がおいしいバイトを持ってきた。
 冷凍食品会社の倉庫で荷物の運搬をするという。1日8時間労働で5000円の賃金は、当時とすれば破格のアルバイトである。
 行ってみると、西三河のあちこちから悪そうなのが集まっていた。各高校の番長級が並んでいる。O工業高校のカッパ崎、J西高校の米太郎、G水産高校のポン吉もいるではないか。こんな連中に私鉄の駅前で遭遇した日には、身ぐるみ剥がされて因幡の白ウサギみたくなっちまう。これは距離をおいておくに限る、とばかりに柄の悪そうなの――といってもこっちもけっして柄はよくないんだけど――と離れたポジションをとる。
 全部で老若男女合わせて40人くらいいただろうか。巨大な倉庫の前のトラックステーションで冷凍車の入ってくるのを待って、トラックが横付けされると一斉に寄って集ってカチンカチンに凍った箱詰めのスケソウダラを並べられたパレットの上に積んでいくという単調な作業である。トラックの入庫が多いとそれこそ目が回るほど忙しいが、それにも波があって、トラックがまったく入庫してこない時間帯もあって、けっこう長い休憩になったりすることもあった。
 そんなときはプラットホームの端に腰掛けて煙草を吸ったりしていた(人もいたということですよ)。
(下に続く)