ダダ漏れ民主主義

 昨日、いつもの書店から「本が届きましたよ」との連絡が入ったので仕事帰りに立ち寄る。日垣隆ダダ漏れ民主主義』(講談社)が届いていた。楽しみにしていたので早速読みましたがな。
 う〜む、かなりレベルの高いメディア論である。歯に衣を着せぬ著者の指摘は、既存の権利の上に胡座をかいてきた大メディアには耳の痛い話ばかりだろう。
 この本の冒頭に、高知県知事になったばかりの頃の、橋本大二郎さんのエピソードがある。
《橋本さんに直接聞いた話だが、初就任直後に次々と知事室に土建関係者がやってきて、大きな紙袋をテーブルの横に置き、中には大量の札束が入っていたと言う。建設的なことを「建設屋さん」たちは何も話さないで黙したまま――。》
 土建屋が何をしに来たのかを察した橋本さんは、その袋をそのまま持って帰るように命じたという。そして著者はこう断じる。
《この瞬間から、地方の反乱が始まった、と言っていい。》
 死ぬまでに一歩でも前進していきたいという方、お勧めの一冊ですぞ。

 民主の目玉である事業仕分け作業で「宝くじの普及宣伝業務」が取り上げられた。そのときに鹿児島県の伊藤祐一郎知事が利権関係者としてふてぶてしい態度を全国に晒していた。これも「ダダ漏れ民主主義」だわさ。
 この横柄な知事様は、宝くじ販売の許認可を持つ総務省からの天下りである。仕分け人が、総務省のOBが宝くじ事業を受注する三財団に天下って、2000万円近い脳衆をもらっていると指摘すると、この横柄な知事様は平然と言い放った。
総務省の優秀な官僚が天下っているのである。2000万円など高くない」
 嗚呼、この人も市民感覚からは大きく解離した「密室、談合」政治がお好きな方なんでしょうね。今や旧式の知事といっていいだろう。

 日垣さんの著書に出て来た橋本大二郎さんの前任の高知県知事にこんなエピソードがある。
 知事選挙で自分の子飼を当選させようと目論んだが、橋本さんに大差で敗れてしまった。通常、そういった政権交代があった場合、副知事や出納責任者もトップと一緒に退陣するものなのだが、「橋本さんもきみたちに残ってほしいと言っている。俺に遠慮はいらん。橋本知事を支えていくのがきみたちの仕事だ」と言って副知事や出納長らを強く慰留したという。これが美談としてウィキペディアに書いてあった。
 本当にこの言葉が善意から出ているのだろうか。天邪鬼なワシャは、不正経理や裏金などがダダ漏れになることを恐れて、自分の子飼を要職に残したようにも思えるんですがね(笑)。