巨星伴星

 昨日、都内で公開インタビューがあった。「世界の夜明けを日本から」と題して、前高知県知事の橋本大二郎氏をゲストに迎え、ジャーナリスト日垣隆氏がインタビュー形式で対談をするというものである。この企画は日垣さんが主宰する「日垣塾」がベースとなっている。
 さて、橋本氏である。橋本氏と言えば、高知県というかなり特殊な自治体で、5期16年にわたり辣腕を振るわれた。1期で県政を投げ出したどこぞの芸人知事とは、その実績において雲泥の差がある。政治の話を聴くのに、どちらのほうがためになると思いますか(笑)。
 それに、講師が自分の言いたいことだけを一方的に話すという(若干の質疑応答の時間があるにせよ)一般的な講演会ではない。気鋭のジャーナリストが次々に切りこんでいくのである。過去に生じた問題についても、遠慮なく追及していく。その内容の厳しさにおいて、大村塾などの独演会方式のものとはクオリティーが違ってくるのは当然だろう。
 もう一つ付け加えておくと、参加者の顔ぶれがまったく違う。「世界の夜明けを日本から」の参加者は、圧倒的に若い人が多い。ワシャは不勉強なオッサンだが、「日垣塾」に集まってくる若人の勉強の量、読書の量は半端ではない。かれらのリテラシーの高さがヒシヒシと伝わってきた。

 橋本氏の話のことである。詳しいことは言えないけれど、3時間近い対談の中、話がまったくぶれない。これが本物の凄さなのかと思わされた。そして、曖昧なもの言いをしない。どちらかといえば強い言い方をしているのだが、橋本氏の身に備わった品のようなものが、その強さを緩和し、聴いている人間に不快感を与えない。これが例えば、名古屋の河村市長となると、勢いばかりで品がないので、どうしてもリテラシーの高い聴衆に受け入れられないということになる。
 また、橋本氏は「政治をしっかりとやるためには、長期にやることが重要だ」というようなニュアンスの発言をされた。ご自身が高知県政と16年も関わってこられた実績に裏打ちされているので、発言が重い。
 残念ながら大村愛知県知事、河村名古屋市長のご両所は、地域政党地方分権と言いながらも、すでにその気持ちは国政のほうに移っている。知事職も市長職も、単なる足掛かりとしか見ていないような印象を受ける。
「いやいや違うんだ。オレたちは東海州ができるまで、中京都ができるまで、愛知で頑張るんだ」
 と言われるならば、誤解をしていたことを深謝させていただく。でも、そんなことにはならないよね(笑)。
 大村知事の講話も、河村市長の演説も何度も聴いてきた。しかし、その内容は残念ながら橋本大二郎氏の足元にも及んでいない。