ヤンキー進化論

 ワシャの仕事は世間的に暇な業種と認識されているが、実際のところはそうでもない。けっこう勤勉で一所懸命に働いている人もいる。しかし、そうでないのもいて、そういうのが目につくんでそんな評価になるのかもしれない。
 ワシャは勤勉でもないし、働き者でもないのだが、なぜか暇な部署にいったためしがない。一時期、月間の残業が160時間を超えた。それが半年ほど続いた時ばかりはもうダメかと思いましたぞ。
 その後もプロジェクトチームを転々と渡り歩き、今は環境部門に身を置いているが、そろそろ組織としての目処がついてきた。最前線で刀を振りまわし奮戦していた斬り込み隊は後方に下がり、事務処理能力に長けた人材にバトンタッチする時期に差しかかっている。異動は構わないが、また面倒くさそうな部署に配置されそうな予感がする。

 土曜日は仕事だった。偉い先生を遠くの大学から招聘し、環境の講演会を実施した。講演内容はためになったが、官僚出身の教授なので、残念ながら話法がなってない。要するに話の盛り上げかた、聴衆のつかみ方などが甘すぎる。いい話をしているのだから、もっとうまくやれば効果も高いと思う。それに官僚にとくに多い傾向なのだが、横文字を多用したがる。コンフリクト(矛盾)、スターン・レビュー(スターン博士のレポート)なんて言っても、地下(じげ)の年寄に通じるわけないでしょ。やれやれ。

 日曜日は朝から高校の同級会の準備に奔走していた。この春にわが母校が90周年を迎えるので、記念の大宴会を実施する。その役員に組み込まれてしまった。
 朝10時に、メンバーの1人が経営する会社の事務所に10人ほどの同級生が集まった。いやー、往年の番長連合が再結集した図というのも一興でゲスな。難波功士『ヤンキー進化論』(光文社新書)によれば、ヤンキーは地元に定着するという。ううむ、顔ぶれを見まわして納得してしまった。名簿を見ても、優秀な同級生はみんな東京とか海外に進出している。地元はすっかり丸くなったヤンキーが支えているんだね(笑)。
 喧嘩に強くなりたいと少林寺に入門したヤンキーは、今では少林寺憲法の先生になって若者に人の道を説いている。無期停学を2回くらったヤンキーは、孫の話を目を細めて話している。校内で酒を密売していたヤンキーは今では地元銀行の偉い様になってしまった。
 番長連合主催の地元高校同級会(総勢360人)に向けてヤンキーどもが走り始めた。これは面白いことになりそうだ。

 ちなみにワシャはヤンキーではありません。念のため。