第四十四回吉例顔見世 夜の部

 昨日、また御園座に行ってきた。
修禅寺物語
 岡本綺堂の時代物を富十郎が演じている。物語は元久元年(1204)、鎌倉幕府二代頼家が北条の手の者によって殺された当日の話である。綺堂は修善寺に旅をして、古刹修禅寺に伝わる古面に想を得てこの物語を創作した。だから頼家以外はみんな綺堂が創り出した架空の人物である。劇の内容はともかくとして、北条氏の手段を選ばぬ権力奪取、頼家の凋落などが現在の自民のせめぎ合いを見るようで興味深かった。何百年経っても人間というものは権力が欲しいんだよね。
【天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)】
 ごぞんじ河内山宗俊(って知らない人は知らないですよね)のサスペンスドラマである。拉致された腰元浪路を救出せんがため我らが河内山宗俊が松江十八万石に騙りをかけるというもの。河内山と松江公、河内山と悪漢北村大膳のやりとりが圧巻。
 大膳に「左の高頬(たかほ)に一つの黒子(ほくろ)」を指摘され、化けの皮を剥がされたが、そこはさすがに河内山。
「家中一同白壁と 思いの外に帰りがけ 邪魔なところへ 北村大膳!」の名調子、三津五郎河内山もなかなか見応えがあった。
 それにしてもこの救出劇を見ていて思ったのだが、北朝鮮拉致問題河内山宗俊ならあっさりと解決できるような気がしましたぞ。大悪を相手にするのに真面目だけが取り柄の外務公務員では埒があきませんわなぁ。拉致が開きませんわなぁ。
 強かなワル河内山の活躍に溜飲の下がった夕べであった。