(上から読んでね)
イベントの講演会は午後1時30分に開場する。ホール前のロビーでは昼頃から受付の準備が始まっていた。
ワシャが顔を出すと、スタッフは暗がりの中で作業をしている。
「なんで照明をつけないの?目を悪くするよ」
とスタッフの一人に声をかける。ロビーの照明は事務室で集中管理されているのでここにスイッチはないようだ。
「事務室に頼んだの?」
「はい、一応事務室に声をかけたんですが……」
明らかに部下が施設係長を忌避しているのがわかった。
「いいよ、ワシャが言ってくる」
「お願いします」
事務室に顔を出すと件の係長椅子にそっくり返っている。
「Hさん」
と声をかけると椅子を回して振り返った。
「ホール前のロビーの照明を点けてもらえませんか?」
と慇懃に頼んだ。これに対する係長の答えが振るっている。
「お前ら」
って、一応、ワシャは年下ですが階級からいえば上司なんですけど。
「お前ら、申請書に午後1時30分から使用と書いてあるじゃねえか。だから1時半になったら点けてやるよ」
「まあそう堅いことを言わずに若い者が暗がりの中で作業しているものですからお願いします」
係長は舌打ちをして、取り敢えず照明のスイッチを入れた。ワシャは礼を述べて部下のところに戻ろうとすると係長が「待てよ」と言うではあ〜りませんか。
「お前なぁ」
って、ワシャはあなたより若いけど、一応、上司なんだけど……
「お前、なんで事務室に入ってくるのに、一言、本日はよろしくお願いしますって言わないんだ」
あ、そりゃ道理だ。
「申しわけありません。急いでいたので言い忘れました。今日はよろしくお願いします」
「人の施設を使うのに何を威張っているんだ」
人の施設って、ここはみんなの施設でしょ。でも、イベント講演会が終了するまでは、妙な妨害を受けたくないので「仰せごもっとも」で体よく引き下がった。小さなトラブルはこの係長にからんだものがほとんどだったが、とにかく無事にイベントを終えることができた。
終わってしまえばこっちのもの。この施設を年度内に使う予定はない。来年度になれば件の係長は退職しているから施設利用でしっぺ返しされる心配はない。今日のスタッフの疲れはほとんどがこの係長に起因していると言っても言い過ぎではない。フッフッフッ……ワルシャワは遂に反撃に出ますぞ〜。
この続きは明日ということで。