コマネズミ

 極めて多忙だ。しかし、その忙しさを楽しんでいる。
 昨日、出勤して朝一番に社長協議。その後、会議が二つ並列して入っている。ワシャには体は二つない。片方に部下を行かせて、もう一方に出る。途中、社外役員のトップに、ある事業の概要説明をするために役員室に行く。部下は資料を持っているだけで、説明はすべてワシャがする。それを終えて席に戻ると、別の社外役員が事務室を訪れていた。それにもきっちりと対応。社外役員が帰ってみれば、午前11時30分を過ぎている。午後から常滑市に出かけるので、早めに昼食をとらなければならない。あわてて社員食堂に走った。
 昼食はソバ、それに海苔玉のふりかけがかかったおにぎり1個だけ。それを本を読みながらかきこむ。食堂には大型のテレビが置いてあるのだが、そこで衆議院予算委員会の中継が流れていた。ちょうど、愛知12区選出の重徳和彦さんの関連質問が始まるところだ。箸をとめてしばし視聴する。
 ううむ、この人、やっぱりモノがいい。「原発の再稼働」や「TPP」について的確な質問をしている。とかく官僚上がりはものが悪いと言われるが、この人、愛知県知事選でチンさんに負けて、西三河で浪人生活を余儀なくされていた。その間に、草の根レベルで地道に活動をしていた。ほんの小さな勉強会にも顔をだし、志のある人々と議論を戦わせたりしていた。
 元々官僚の中でもモノが良かったので、早々と霞が関に見切りをつけて愛知県知事選に打って出たのだが、残念ながら凸凹コンビのパフォーマンスに敗北を喫する。しかしその後の2年間の浪人生活は無駄ではなかった。この雌伏の時間が重徳さんの実力に磨きをかけた。
 もちろん凸凹コンビとは雲泥の差がある(言うまでもないけど雲が重徳さん)。それに周辺の国会議員と比べても頭一つ抜きん出ているのは間違いない。こういった人材が日本の舵取りをしていくべきなのである。
 ワシャを含めて大衆というものはあまり利口ではない。その時の空気に流されることがままある。だから無名だった重徳さんは、知事選、総選挙で苦杯をなめた。だが、比例復活とは言えこのたびの総選挙で手がかりを得た。この人、大衆の目に触れれば必ずやそのモノの良さが伝わるはずだ。大衆の目にとまれば国政の檜舞台に躍り出すだけの力量を持っている。頑張れ、志のある若者よ。国会中継を見て、涙ぐんだのは初めての体験だった。

 おっと、出かける時間が迫っている。またあわてて事務室に駆け戻り(会社内を走っている課長はワシャだけだっせ)、身支度を整えて、昼過ぎに車で常滑市に向かった。目指すはセントレアである。

 昨日は強い風が吹いていた。車は若い担当が運転している。助手席には管理職の部下が座り、後部シートのワシャと3つの事業案件について書類と睨めっこしながら打ち合わせをした。
 打ち合わせなど、会議室をとって仰々しくやる必要などない。主宰者の挨拶、アウトラインの説明など、暇な管理職を集めてやったって時間の無駄だと思っている。担当の課長、係長、係員の3人で具体的なことを決めて、その後、上司に報告すればよろし。他課の課長など決定後に「こうなりました」とメールでも打っておけばことは済む。
「聞いてないぞ」という課長には「言ってないから当たり前だ」と言うことにしている。
 セントレアに向かう1時間ほどで、3つの案件の方向性が決まってしまった。ざまーみろ。

 さて、セントレアである。ここである講演会が開催された。ネットから探そうと試みたのだが見つからない。古い情報はあるのだが……。
主宰者のNPOのホームページはあるのだが頻繁には更新されていない。
http://www.toko.or.jp/NPO/index.html
 とくに昨日の講演会の情報などどこを探しても見当たらない。かなりお役所臭の強いNPOだね。
 おっと、役員を見れば愛知県の建設部OBが名前を連ねている。ははーん、県の息のかかった土木系NPO団体といったところですな。まだ、こういった建設土木系の仲良しクラブがあるんですね(笑)。
 そんなことはどうでもいい。要は講演の中身である。講演は、新関西空港株式会社の取締役の話である。
 我社としては、積極的に知多半島の情報を収集している。とくに平成39年開業のリニア新幹線と航空輸送との関係性にはとても興味を持っている。そんなこともあって、講演会に潜り込んだのだった。

 講演会はじつに堅苦しい型通りのものである。司会進行は県職員。主催者あいさつは県のOB。共催者の常滑市長のあいさつの後、次第にない飛び入りの来賓あいさつがあった。衆議院議員伊藤忠彦氏である。
 あれ?いいのかなぁ。今、国会では予算委員会の真っ最中で、さっき、重徳さんの頑張っているところを見てきたところなのに……こんなところに顔を出していて大丈夫なのだろうか。地方議員上がりの2期目の代議士なので、演説は堂に入っている。ただ、まだ2期目でしょ。予算委員会を傍聴して勉強をなさったほうがいいのではないでしょうか。和歌山の土木建設のドン、二階俊博氏のグループに所属しているから、この人も建設族議員なのだろう。
 ま、そんなこともどうでもいい。国の行く末よりも地元の固め、利権に連なることが大切なこの程度の人材は数多いるからね。
 それよりもその後のメインの講演会のことである。新関西空港(株)の取締役である。
 いい話がときおりあるのだが、いかにも官僚上がりらしい抑揚のない盛り上がりのない事務的な、笑いさえ事務的なプレゼンだった。
「えー電動紙芝居……ではなくパワーポイントを使って……」
 それがギャグなの?会場からは失笑しか起きない。
 そのパワーポイントだが、これが細かい字と、小さなグラフをいくつも詰め込むから、まったく判らない。その上に枚数が多いときたもんだ。事務局が巻きを入れても、予定の1時間を20分もオーバーしてしまう体たらく。会場はぐっすりと眠りについていたからそれはそれでいいのだろうが、官僚の典型的悪プレゼンの見本のような講演だった。
 前座のあいさつを含めて、気持ちのこもらないつまらぬ話ばかりだった。
 それでも眠らずに聴いていたので、日本の空港業界が抱える問題点はおおむね理解できたのは良かったわい。

 あわてて会場を飛び出す。20分遅れである。空港のロビーを走りながら次の仕事先に連絡を入れる。やっぱりワシャはどこでも走る運命にあるのだった。

 次は半田市に行く。あるイベントの打ち合わせをするためである。そこで小一時間、喧々諤々の交渉をして、おおむね我社の言い分を呑み込んでもらう。
 
 その次は西尾市である。もう陽はとっぷりと暮れている。しかし、まだ仕事は終わらない。西尾市で同業者の情報交換会があるのだ。そこに出席をして、その後、お好み焼き屋で交流会となった。
 これがいけない。夜ですよ。昼食ならまだしも、お好み焼きで酒が飲めますか。宴席ですぞ。メニューはその他に焼きそば、もんじゃ焼き、なにがうれしくて小麦粉ばかり食わなきゃいけないんだ。

 あらかじめ、そんな情報を入手していたワシャはセントレアのロビーを駆け抜ける際に、売店を見つけて、伊勢湾名物の海苔の佃煮と、豊橋名産の山葵竹輪を入手していたのだった。まぁそれを肴にお酒をいただきましたが、担当者のゲストに対する思いやり、気配り、敬意が感じられなかったので「お好み焼き食べ放題飲み放題3000円ポッキリ」を選択した担当者には大きな雷を落としておいた。
 あ〜忙しい一日だった。