スタンド決戦 その1

 陸上自衛隊の「富士火力演習」は年々人気が高まっているようで、チケット入手も難しくなっているという。愛知県三河勢は現地到着午前5時半という異常な早さで会場入りしてスタンドの自由席を押さえた。
 ちなみに演習観覧席はスタンド席(指定席、自由席)とシート席がある。昨年は指定席が取れたのだが、今年は参加人数が多かったせいで100人ばかりが自由席となった。ワシャも指定席はお年寄に譲って自由席の方に陣取った。
 午前6時、まだ観覧席は閑散としている。それでもワシャらのように気の早いチームは続々とゲートから入ってくる。シート席の最前列、いわゆるかぶりつきはコアな自衛隊フリークでほぼ埋まっていますぞ。
 席に落ちついたメンバーを確認して幹事から注意事項がとんだ。
「今日は天気が悪いので、シート席の客がスタンド席に避難して来ます。だから、席を立つ時は周囲の仲間に声をかけて、必ず荷物を置いて席の確保をしてください」
「周辺でトラブルが起きても関わらないように」
「バスにもどる方は必ず役員にその旨を連絡してから移動してください」
 すでに夜明け前から雨が降っている。ワシャは準備してきたカッパに身を固め、エアクッションを敷いてスタンドに坐っている。若い人たちは無防備だ。Tシャツ半ズボンという出で立ちで雨の中、修行僧のように濡れそぼっている。
 午前8時を回った。雨は降る降る陣羽は塗れる……会場はずいぶん混み合ってきましたぞ。