現代妖怪大全

【腹嘗め(ハラナメ)】
 鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に「垢嘗め」という妖怪が出てくる。別に何も悪さをするわけではないのだが、妖怪が家の中に入ってくること自体気持ちが悪い。だから風呂をきれいにしておこうという「教訓的妖怪」である。
 現代ではこの「垢嘗め」の変種が現われた。それが「腹嘗め」である。これも汚いものを嘗めるという点では同じである。これから夏になるとネーチャンたちが街中を腹を出して闊歩する。その腹がきれいな腹ならいいのだが、ビロ〜ンと弛んだ腹の場合はしまっておいたほうがよさそうだ。暗がりから突然「腹嘗め」が現われて、でっぷり腹をペロ〜ンと嘗められまっせ。でも、妖怪腹嘗めはそこまでしかしませんぞ。それ以上の行為に及んだら、そいつは妖怪より恐ろしい「ストーカー」「痴漢」という人間(バケモノ)ですからご用心を。
【火飛黙(ヒトダマ)】
 夜道を歩いていると、遠くにポツッと小さな火の玉を見つけることがある。あるいは走っている車の窓から火の粉を散らして火の玉が飛ぶことがある。これを火飛黙と言う。火のついたタバコをポイ捨てしたバカはたいてい黙って去ってしまう。しかし捨てられた中途半端なタバコたちは恨みに思って捨て主のところに化けてでますぞ。でも夜が明るすぎて誰も驚かないんだとさ。
【座ヒッキーわらし】
 昔は岩手県を中心に現われた妖怪の「座敷わらし」の後裔、最近は全国的に蔓延中。「座敷わらし」は家を繁栄させるが「座ヒッキーわらし」は家を没落させる一方で、何の役にも立たない。