ストレスな奴ら その2

 事務所を訪うと白髪の柔和な紳士が待っていた。これがクレーマーだ。この人、3年ほど前から知っているのだが、どうにも偽善者臭が強いのではっきりいって敬遠していた。その辺りを向こうも感付いていたんだろうね。のっけからワシャを無視して部長と話をする。それはそれでいいのだが、時折、思いだしたようにワシャにむかって「君はだれなんだ?」ときく。敬遠していたって3年来面識があるんですよ。なんども打ち合わせや会議で一緒になっているし、挨拶だって欠かしたことがない。それでも「誰だ」と訊くから「ワルシャワです」と答えると、「そうか」と言って再び部長との話しに戻っていく。その後も30分おきに「君はだれだったっけ」と繰り返すものだから、3度目にはさすがに笑ってしまった。「もういいですよ」と答えると、件のオヤジの顔色が変わった。おっと偽善の仮面がはがれるかな、と期待したのだが、さすがに敵もさるもの引っかくもの、色を硬い笑みで払拭すると「ワルシャワ君だったかな」と言い継いで誤魔化されてしまった。
 結局、部長の平身低頭が功を奏しクレーマーの理不尽な怒りは収まったが、このクレーマーとのいざこざはまだまだ続くのであった。