読書会の夜

 昨夜は刈谷駅前で「読書会」があった。課題図書は王敏著「ほんとうは日本に憧れる中国人」(PHP新書)、法政大学教授の著者が日中双方の歴史観や文化の差異を分析し、「反日」とは何なのかを論じている。が、朝日新聞アジアネットワーク客員研究員である著者の考え方は、コラムニストの勝谷誠彦氏のいう「築地をどり」系の名取たちと大差はない。なんでこんな論をPHPが?と疑問を呈したくなる1冊だった。
 例えばこうだ。
《中国は日本との戦いで2180万人が犠牲になったとしている。3000万人とする説もある。日本でこの犠牲者数に対する疑問があるのは知っているが、第2次世界大戦に関った国のなかでもっとも多かったことは間違いない。》って間違いである。第2次世界大戦でもっとも被害の大きかったのはソビエトだったし、中国戦線での戦闘は南方戦線に比較すれば落ち着いていたといえる。事実、映画監督の小津安二郎が中国戦線に送られたが、彼は一人の中国人も殺すことなく帰国している。装備の貧弱な日本軍がどうすれば3000万人もの人々を葬り去ることができるのだろうか。プルトニウム型原爆を428発も落とさなければいけないのである。お寺の鐘や鍋釜で金属部品をまかなっていた国ができることではないでしょ。
 著者は言う。「日本人は悲惨な過去について触れたくないという共通認識を持っている。だから駄目なんだ」と。
《中国人はまったく逆でしつこい。過去の苦しい時代は決して忘れてはならず、これは当然のこととして疑わない。辛い記憶を繰り返し呼び起こすことによって未来に引き継ごうとしている。》
 おいおい、都合のいいことは覚えていて、都合の悪いことは忘れるのかな。フランスのシュテファン・クロトアの「共産主義の黒書」によれば中国の共産主義に起因する死者の数は6500万人となっているのだが、文化大革命を忘れちゃったんだね。
 日本の教科書についてもこう言う。
《日本がアジア諸国とバランスのとれた歴史教育プログラムを組んでいないことも大きな課題だろう。》
 そのままこの言葉をお返ししたい。
 おっと、読書会後の飲み会の話を書こうと思ったが、「王敏さん」のお陰で書けなくなってしまった。
 飲み会の話「白木屋の変貌」は明日のこころだ。(どうでもいいけど)