中津川殺傷事件

 凄惨な事件が山間の町で起きてしまった。57歳の公務員が一家5人を殺害して自らも自殺を図ったが死にきれなかった。この定年を目前に控えた老公務員に何が起きたのだろうか。いくつかの要因の可能性を考えてみた。
1、合併
 老公務員が働く坂下町岐阜県と長野県の境にある人口6千足らずの小さな町だ。この町や長野県山口村が2月13日に中津川市との合併に踏みきったことは記憶に新しい。当然、合併などという変動は職員に大きなストレスを与えていたことは想像にかたくない。
2、世代
 57歳という年齢と老人保健施設の事務長という肩書きから想像できるのは、本流から外れたおとなしい職員のタイプである。仕事をばりばりとこなしていくというタイプではない。この容疑者を含む世代はそのすぐ下に団塊の世代を控えており、常に追いかけられているという感覚に苛まれていたに違いない。愛知県の自治体でも、この世代の職員は定年退職を待たず早期に退職をしていく事例が増えている。
3、下僕
 容疑者が公務員になったのが昭和45年というから大阪万博の時期である。その頃の公務員の地位は社会的に高かった。あれから35年が過ぎて公務員の地位は劇的に落ち込み、公僕どころか下僕のような状況に甘んじなければならなかったのではないか。
4、性格
「穏やかな性格」だったと周囲の人が口をそろえて言うということは、この容疑者が内側に鬱積を溜め込んでいたことの証拠でもある。厚顔で傍若無人に振舞える公務員はこんなことをするほど追い詰められない。穏やかだから危険なのだ。
5、多忙
 本人は「忙しい、忙しい」と周囲に漏らしていたという。私的に関る会議にも欠席するようになったという。朝日新聞の社会面の見出しは『「温厚な人」なぜ』となっているが、この人は暴発するべくして暴発しているのである。今、地方自治体が民間の真似をして「成果主義」だの「競争原理」だのを導入して経営の効率化を図ろうなどというバカなことをしているが、本家本元だった富士通をはじめとする民間企業では「成果主義」は崩壊をしているのである。「少数精鋭」などという空しいお題目を唱えてもダメだ。もともと精鋭じゃないんだから、そこに大きなプレッシャーをかければ櫛の歯をひくように職員は壊れていく。
 この事件はそういった観点からも検証すべきだと感じている。