中津川殺傷事件のつづき

 う〜む、昨日の中津川の事件がまだ尾を引いている。
 尋常ではないこの殺人事件の原容疑者を、安城事件の氏家や寝屋川事件のOと同じレベルで見ることができないのである。
 まず氏家の起こした事件のような自暴自棄になった突発性の狂気が感じられない。犯行前日にわざわざ預けてあった愛犬を引き取りにいって、犬と訓練に使っていたという湖畔の林の中(思い出の場所)で殺害している。これが惨事の前日である。その後、原容疑者は妻とともに娘宅に赴き、そこで夕食をしている。一家団欒の楽しい食事である。孫もかわいいさかりで、食事中もその一挙手一投足で一家を沸かせたに違いない。だがその風景の中でも原容疑者は「殺害」の計画を練っていた。何故か?残念ながら報道から得るだけの情報では解明することができない。
 また寝屋川のOが抱いた逆恨みのような狂気がこの事件には感じられない。認知症の母親がいたが母親が疎ましいなら母親だけを手にかけているはずだ。それがなぜ妻を除いた一家全員なんだろう。原容疑者の身辺から聞こえてくるのは「仲のいい家族」という評価ばかりなのである。
 では何がこの老公務員の心を蝕んでいたのだろうか。「三叉神経症」という持病があったらしい。聞いたことがない病気だが、どうも「歯痛」の一種らしいが、これがこの凄惨な事件の発端とも考えにくい。
 殺人事件が起こると人権派の皆さんがよく使う常套句に「社会が悪い」というものがある。何度も何度も耳にしたがその都度「そんなわけねえだろう」と思っていた。しかし今度の事件ばかりは、どうにも事件の整理がつかず「地域社会」あるいは「職場環境」に問題があったのではないか、と思っている。
 暇人ならすぐにでも中津川に飛んでいって(野次馬ではなく)、そのあたりの取材を敢行し(観光ではなく)、この疑問を解決するのだが、如何せん会社勤めの不自由な身の上では、ストレスを抱えつつ報道に注意するくらいしかないか。