セクハラ

 財務省の福田事務次官がおもしろい。女性記者が録音したものを聴くと、この事務次官、ホントに女好きというか、セクハラが好きなんでしょうね。発言の内容については――ワイドショーやニュースで際物として扱われているから――ここで説明しない。

 20年ほど前には、世にこんなふうにクセの悪いオヤジは山ほどいた。
 ある飲み会の二次会でのことである。ある部署の社員で、飲み屋街にあるスナックビルの5階で飲んでいた。そこで上司が酩酊し、ワシャの後輩の女性に抱きついてチューをしようとした。ワシャはあわてて上司を押しとどめて、女性に逃げるように促した。女性は逃げた。しかし上司は怒り狂った。そしてスナックビルの外階段の5階からけり落とされたものである。
 またある時は、深夜、横浜から電話がかかってきた。会社を退職して横浜に嫁いだ後輩からだった。話を聞くと、会社の当時の上司だった部長が「東京出張のついでに寄ってみた」とか言って新横浜までやってきたんだとさ。「せっかくなんで食事でも」と誘われた。愛知県からわざわざ出てきてくれたこともあり(と言っても出張のついでだけど)、無下にも断れず、新横浜界隈で夕食をとり酒も飲んだとのこと。その後、駅に送る道すがら、突然、部長が襲いかかってきたのだそうな。辛うじて虎口を脱した女性は、その部長と知り合ったサークルで、一番紳士的なワシャ(ホントですぞ)に連絡したとのこと。怒っていたなぁ。ごめんね。
 オッサンばかりではない。若いヤツの中にも見境いのないヤツはいる。宴席ですぐに同僚の女性を触るんですね。そういうのもワシャは我慢できない。それがワシャの好きな女性だったりすると怒りは倍になる。上司だって止めるんだ。同僚や後輩なら容赦はしない。鉄の暴風のような口撃がセクハラ男を襲うのである。
 そんなことはどうでもよかった。なにを言いたいかというと、ワシャの周囲にだってそんなのはたくさんいた。だから、財務省の福田事務次官もそんなタイプだったんじゃないの……ということですわ。
 財務事務次官様を、一般企業の部長や地方自治体の管理職ふぜいと比較するのは、畏れ多いことではありますがね。(笑)。

 彼の生まれた昭和33年生中、福田くんは日本の記憶力頭脳の最高峰だったにちがいない。黒板も見ただけで、教科書も読んだだけで脳の中に記憶されてしまう。そんな脳味噌の持ち主が、さらに刻苦勉励して勝ち取ったスーパー官僚の座である。彼らにとって新聞記者、それも記事が欲しくて集まってくる女性記者など牝ハイエナにしか見えなかったろう。
 それにしても「キスしていい?」「おっぱいもんでいい?」などを普通の会話の中にごく自然に織り込んでくる「バカさ加減」は生半可なセクハラオヤジではない。このバカ、かなりできるバカだ。できるバカというと語弊がある、かなり腐ったバカと言った方がいい。腐ったも違うか……かなり醗酵したバカくらいにしておきますわ。
 福田くん、おそらくあの佐川国税庁長官ですら見下していただろう。なにしろ天下の財務省でトップ官僚というのはそれほどの存在と言っていい。政治家などなにほどのものでもないし、それ以下の国民など福田家の庭にいる毛虫よりも価値がないと思っている。思っていないかもしれないが、認識としてはその程度のものである。

 昨日の日記に、『いいとこ取り!熟年交際のススメ』(新潮文庫)から「仕事のできる男とやっとけ」という西原さんの名言を抜粋した。間違いなく官僚トップの福田くんは、西原さんのいう仕事ができる男である。国家情報すら握っている。ジャーナリストとしてスクープを狙うなら、これほど「ど真ん中のターゲット」はいないだろう。それも女好きときたら、ボロボロ情報が取れまっせ。将来、報道人として、作家として一発当てたいなら一発やっとかなきゃプロとは言えない。
 
 福田くんのセクハラ発言を録音した女性記者が名乗り出ないという。だったらなんのために録音したんだ。さっさと出てきて権力の小悪(ですらないと思うけど)を白日の下に晒す。それがジャーナリストの使命だと思うが……。