去り際

 北海道紋別市の一人暮らしの93歳女性が殺されて、殺人容疑で逮捕されたのはひ孫だった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161120-00010001-hokkaibunv-hok
 サイコパスの起こす殺人は別として、誰かが殺された場合、犯人はその周辺に存在することが圧倒的に多い。とくに配偶者、親、子、孫などというところに加害者はいる。この事件ではひ孫だった。人生の幕引きのところで、わずかな金のために悪鬼のような形相に変貌したひ孫に殺される。この世の最期に見たものがそんな醜いものだとしたら、あまりにも悲しい。

「文藝春秋」の最新号に橋田壽賀子さんが「私は安楽死で逝きたい」と題した問題提起をしている。この文章は、財産をしっかり持っていて悠々自適な橋田さんが書かれたということを前提にしても、現在の高齢化の問題、老老介護の問題、老後貧困の話について一石を投じているものだと思う。
 橋田さんは天涯孤独である。ご主人はすでに鬼籍に入られ、子供はいない。個性的な生き方をしているので親戚とは音信不通となっている。それに90歳をこえて、周囲の友人も少なくなってきている。だから親友の山岡久乃さんや森光子さん(両者ともに故人)からの手紙やファックスも全部処分したと言われる。橋田さんは、葬式もしたくないと断言する。そしてこう締める。
《テレビに訃報が出るなんて想像したくもありません。原節子さんのように、人に知られずひっそりと死にたい。「あの人、最近見ないわね。あっ亡くなっていたの?」って言われるくらいが私の理想です。》
 さすが人生の達人である。