友だちがこの日曜日に京都の貴船神社に行ってきたそうだ。生憎の雨模様だったとのことだが、考えようによっては、とてもラッキーだったかもしれない。
貴船の祭神は高龗神(たかおかみのかみ)である。高は山峰をさす。これは社殿西の貴船山(700m)のことだろう。この山は鴨川の水源でもある。龗(おかみ)は龍神のことで、龍は水をつかさどる。貴船の龍神を訪なうときに雨が降るというのは、これは歓迎されている験(しるし)と言っていい。
さて、貴船神社のことである。創建の時期は不明であるが、古くから雨や水をつかさどる神として崇敬されてきた。史料の初見は平安時代の初期である。このことから平安遷都以前から、産土神(うぶすながみ)として存在していたと考えるのが自然だろう。平安京の東に横たわる鴨川は、大雨のたびに氾濫していた。平安人(へいあんびと)はこれを治める確たる技術を持っていない。あとは神に祈るしかなかったろう。その対象が、鴨川の水源地である北の山深い貴船の地になるのは必然と言っていい。
貴船神社には、諸々の「まつわる話」がある。平安中期の女流歌人の和泉式部が恋愛問題で悩み貴船に参って、歌を詠じたことなどは有名な話だ。また、宇治の橋姫が丑刻参りをしたのもこの貴船神社である。
6月に名古屋能楽堂に出掛けたのだが、この時の番組が「誓願寺」と「鉄輪」だった。「誓願寺」は紀州熊野を舞台にした話だが、シテ(主人公)は和泉式部の霊である。「鉄輪」はずばり貴船神社を舞台にしたサスペンスドラマだ。今考えてみれば、双方とも貴船に深い関わりのある能だったんだなぁ。
そういえばあの日も、今にも雨が落ちてきそうな曇り空だった。でも、なんとかもった。龍神の神通力も名古屋までは届かなかったようだ。
友だちから京都のお土産をもらった。原了郭(はらりょうかく)の「黒七味」である。実はワシャはこの「黒七味」が大好物なのじゃ。早速、夕べの晩酌でいただきましたぞ。美味い!