ノモンハンの日

《七月一日 晴 大暑 ノモンハン戦斗第一日 将軍廟を発し炎暑曠原砂漠地帯を行軍》
 ハイラル駐屯第23師団長小松原道太郎中将の「陣中日誌」の記載である。

 昨日、『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)に触れた。その中の失敗事例の冒頭に「ノモンハン事件」が登場する。この世紀の愚戦を参謀として演出したのが、歴代の日本軍将校の中でももっとも愚将と言われている服部卓四郎と辻政信である。23師団15,140人の兵力中、10,646人戦死傷しているから、ほぼ師団は壊滅したと言っていい。小才を誇る学歴将校が幅を利かせたために、大敗北を喫したである。

 先の戦争ではこの手の話にはことかかない。日本軍という組織のいたるところに服部や辻のような人材……いやいや人罪が跋扈していた。こいつらが日本を破滅の淵に導いていったと断言できる。
 その辻のことである。この男、頭はやたら切れる。ディベートについても巧みで、上官でもその口舌で攻め落とす。しかし、責任だけは絶対にとらない男だった。戦後、戦犯から逃れるために、それこそアジアじゅうを逃げ回った。その逃亡生活が終わると、その逃げ回った生活を本にして、ベストセラーを立て続けに出す。その後、国会議員にまで登りつめ「選良」としての人生を全うする。しかし、辻の足元には、累々たる日本人の屍が踏みつけにされているのである。

 さて、東京電力には辻はいないだろうか。服部はいないだろうか。