どんなに歪でも至宝は至宝 その1

 今からざっと270年前の元文2年(1737)、その年に『役者年徳棚(やくしゃとしとくだな)』という評判記が書かれた。その筆頭に登場し「極上上吉」のトップランクに位置付けられているのが市川海老蔵である。ミシュランで言えば三ツ星のその上くらいのランクでしょうか。
 現在、海老蔵という名跡団十郎の前名になっているが、江戸期には団十郎の後に名乗る名跡でもあった。この評判記に書かれている海老蔵は二世団十郎のことであり、団十郎を退いた後の名乗りである。だから芸も練り上げられており、作者も「なるほど此の人に続くはござらぬ」と絶賛している。

 さて、現在の海老蔵くんである。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/101201/med1012012147002-n1.htm
 あの夜、何があったかが少しずつ見えてきた。そのことにより世間様の論調も変化しているらしい。相変わらず付和雷同な世間様だわさ。
《歌舞伎ファンらの見方は「自業自得だ」と論調が変わりつつある。》
でも、ワシャの立ち位置は変わらない。それでも海老蔵海老蔵なのだ。
 彼が「おれは将来人間国宝になるんだ」と言ったらしいが、何か間違っているのだろうか。彼が並みの役者程度に精進すれば、間違いなく人間国宝になるだろう。
 三流タレントの河合俊一がこんな話を披露している。
「僕の知り合いで、絶対に怒らないって人が海老蔵君としゃべって1時間もたたないうちに、『なんだこのガキ、出ていけ』とキレた。それだけ人を怒らせる天才」
 河合俊一も怒らないのに怒った人も、どれだけ努力をしても人間国宝にはなれまい。いやいや確率は極めて低いが、なれる可能性はイトカワの塵ほどにはある。しかし、海老蔵には絶対になれない。あたりまえだ。海老蔵はそこいらに落ちている石くれではない。生まれた時からオンリー1の存在、歌舞伎という日本の伝統芸能の至宝なのである。
(下に続く)