酔笑人神事 その2

(上から続く)
http://www.atsutajingu.or.jp/jingu/about/keidai/
熱田神宮の地図を参考にしてください)

 浅沓(あさぐつ:平安貴族がはいている黒い木靴)で、ザッザッザッと玉砂利を踏みながら、南に進む。信長塀を越えて右に曲がり、参道に出て三の鳥居の脇で止まってなにやら儀式めいたことをやっているようなのだが、なにしろ熱田の杜のもっとも鬱蒼としたあたりである。空はまだ明るいのだが、神官のいるあたりは樹木に遮られ暗くて見えない。それに270人もの野次馬が嘶いているので神官の声も聞こえなかった。
 しばらくすると神官が動きはじめる。参道を南へ進み、警衛詰所のところで右に曲がり西門から国道19号の歩道に出てしまう。歩道を提灯に誘導された神官の列に付き従って野次馬が金山方面に歩く。西門から出て少し行くと車のお払い入り口があって、そこから神官たちは境内に入って行く。車のお払い入り口のすぐ左手に「影向間社(ようごうのましゃ)」というお社があって、でも、そのころにはとっぷりと日が暮れている。19号沿いの歩道は明るいけれど、一歩、境内に入ると真っ暗な状態で、お社の前で何が行われているのか皆目判らない。ただ、ここでは「ヒーヒョロ〜」と笛が鳴った。それに続いて神官たちの「ワッハッハッハッハ……」という哄笑が響いた。都合3回、笛と哄笑があって、再び神官たちは、境内から19号の歩道に出て来た道をもどって行く。西門を潜り、警衛詰所の十字路を右に曲がる。つまり参道を本宮と反対の一の鳥居をめざして進む。
 一の鳥居の西側に「別宮(べつぐう)」がある。その前で、やっぱり「ヒーヒョロ〜」「ワッハッハッハ……」が3回、それからまた一の鳥居にもどって参道の東の小道を北に向かう。
「清雪門」のところで神官たちは、三度「ヒーヒョロ〜」「ワッハッハ……」をやって、ここでは、神官たちが門に向かって拝跪するのが判った。
 また小道を北に向かい、東門参道に出て、警衛詰所を右に曲がって神楽殿の前に戻って、四度目の「ヒーヒョロ〜、ワッハ……」をやって、午後7時43分だった。
(下に続く)