器量のない人 その1

 浅田次郎の『壬生義士伝』(文藝春秋)の中に.新宿大野一家の貸元が語るくだりがある。
《人を束ねる器量てのは、学問じゃござんせん。苦労の分だけ、そういう器はちゃあんと備わるものでござんす。》
《苦労の足らねえやつらばっかしだから、どいつもこいつも年よりか若く見える。女なら悪かねえが、男が年より若く見えるてえのァ、決していいことじゃありやせん。そんだけ馬鹿、ってこってす。》
 久しぶりに『壬生義士伝』を読んで感動しながらも、上記のフレーズが引っ掛かった。

 午後9時からフジテレビで「エチカの鏡
http://wwwz.fujitv.co.jp/ethica/index.html
という番組がやっていた。1時間の番組は、最初と最後にまったく同じネタを流すという言語道断な最低な編集だった。でもね、たまたま「餃子の王将」の再建の話を取り上げていて、それは興味深かった。
餃子の王将」の現在の社長は大東(おおひがし)隆行さん(68)、現場からの叩き上げだ。「餃子の王将」はバブル期に不動産や他業種に手を広げ400億円を超す借金を抱えてしまった。それを立て直すために社長に就任し、わずか4年でそれを実行した。現在も、この不況の中にあって前年比で10%以上の売上増を叩き出しているというから凄い。
 大東さんが厨房に入って餃子を焼くシーンがあったが、もちろん現場に熟知している社長だ。実に美味そうな餃子を手早くつくった。従業員たちもその手並みに舌を巻いていた。全国240人の店長を束ねるリーダーは、学問じゃないんだ、どれだけ苦労しているかなんだなと思った。
(下に続く)