MRI体験

 午後4時、市内の総合病院の正面玄関をくぐる。「自動再来受付機」に診察券を入れて手続きをする。受付票には「8番受付に行け」と書いてあるので、地図を頼りに病院の中をさまよった。
 それにしても夕方の総合病院というのは閑散としていますな。たまに看護婦さんとすれ違うくらいで、日中の喧騒が嘘のように静まり返っている。
 受付ではマスクをしたお嬢さんが2人座って待っていた。
「お願いします」と受付票を手渡すと、受付票のバーコードを機械で読みとって、「ワルシャワさんですね」と訊いてくる。
「そうですたい」と答えると、MRI検査室までの詳細な道順表を渡してくれた。
 それを見ながら再び病院内をうろうろする。ようやく検査室を見つけると中に入った。そこは検査待合室になっているのだが誰もいない。病院だから仕方がないのだろうが無機質な部屋の中にソファーが2つとテレビが1台設置してあった。そのソファーの向こうにドアが2つあって、そこが更衣室のようだ。よく見れば、壁のあちこちにいろいろな指示が書いてある。
《どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。》
《ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします。》
《当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください。》
「え?」
 更衣室の扉を開けて中に入ると、またまた壁に指示が書いてある。
《検査着に着替えてください。》
《ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください。》
《壷のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。》
「ええっ?」
 待合室で待つこと10分、検査員が現れて「こちらへどうぞ」と検査室に誘導してくれた。よかった、「山猫軒」じゃなかった。
 検査室は待合室よりもますます無機質な空間だった。クリーム色の室内にドーナツ状の巨大なMRI機が鎮座し、ドーナツの中央の穴から黄色い舌を出したように細長いベッドが伸びている。どうやらここに寝るようだ。
 おっと、出勤時間になってしもうたわい。この続き「恐怖のMRI体験」は明日のココロじゃ〜。