杜若

 遅れ馳せながら八橋のかきつばたまつりに行ってきた。『伊勢物語』に《その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。》と書かれている八橋である。
 昨日、久々に休みをとった。たまりにたまっている積読本を処理するためだ。早朝から書斎(物置とも言う)にこもって本を読み漁っていた。
 富坂聰『中国という大難』(新潮社)、武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかりとおるのか』(洋泉社)を2冊やっつけたところで、ふと窓を見上げると、つきぬけるような青空が見えた。「いい天気なんだ」と思いながら窓を開け放つと、風の香が書庫に流れこんだ。そうなるといても立ってもいられない。10時をまわっている。遠出は無理だ。そう言えば八橋無量寿寺でかきつばたまつりが開催中なのを思い出した。少し遅いが何本かは咲いているだろうと、家を飛び出したのじゃ。
 いやー、13,000平米の敷地に3万本の杜若が圧巻だった。杜若はあやめや菖蒲より花弁が細身で楚々としている。花が小さいので濃い紫がやさしい。晴天の下、寺の庭園を散策し、しっかりと外気を体内に取り込んでリフレッシュしたのだった。