愛知県知事が自身で大書した「老虎千里」という墨跡を仕事始め式で披露した。30人ばかりの幹部が参加したそうだがいい迷惑だったね。
《大村知事は「老虎千里」との造語書き初め》
https://www.nagoyatv.com/news/?id=010678
ふうむ、ちょいと「老虎千里」が気になったので、ワシャは書棚にあった『現代中国語辞典』(光生館)で「老虎」を調べてみた。
「老虎」については「トラ」と書いてあるだけで、普通に「虎」のことらしい。「老」が付いているが「老いた虎」とは書いてなく、英語記載でも「tiger」となっているだけなので、「老虎」は単に「虎」のことと認識していい。
「老」には、「老いる」「年月が長い」「疲れ果てたさま」などと並んで「熟達したさま、たけているさま」という意味もあるので、「虎」に「老」を乗せて「立派に成熟した虎」と読めなくもない。しかし、繰り返すが、支那語では「老虎」は単なる「トラ」、英語に訳しても「タイガー」ということ。
日本語にすれば「老虎」は「老いた虎」、「年老いた虎」と解釈するのがスタンダードではないか。
「老虎」の後に「接尾辞」をつけた言葉がいくつかあった。「接尾辞」はワシャには読めないものが多いので、「接尾辞」を含めた訳を記載しておく。
「運搬用の手押し車」
おお、これなら「手押し車を押して千里を走る」てな意味でしょうかね。なんのこっちゃ。
「屋根窓」
「狭い屋根窓から千里が見わたせる」ってか。これなら意味が通りますな。
次のは「接尾辞」が読めた。「皮」だ。「老虎皮」で「軍服」のことだそうな。「軍服千里」ではなんのことやら。その次のも読めた。「老虎魚」と書いて「オニオコゼ」のこと。オニオコゼが千里を泳ぐ?わけが分からない。
他でも調べたんだけど「一只老虎」は「1匹のトラ」、「戳穿紙老虎」は「張り子のトラを見抜く」と訳してある。これを見てもやはり「老虎」は「トラ」でいいようだ。
ニュースでは「老虎千里」というのは大村知事の造語ということで、自分で造っちゃって悦に入っていたのね(笑)。
大村知事は墨跡の横で満足げに力説した。
「積み上げてきた愛知の力を礎に、さらなる飛躍につながるビッグプロジェクトをなみはずれた行動力で前進させるという決意をこめた」
まぁ造語ということだから「どうぞご勝手に」てな感じなんですが、それでもここまで強引なのもいかがなものか?と、漢籍に疎いワシャでも思う。詳しいことは漢籍のオーソリティーの呉先生に確認をしてみようっと。
どちらにしても独自解釈の「老虎」を3期目に入って安定してきた自分自身に重ねたことは、その発言からもうかがえる。
ま、まさか「オニオコゼ」が自分に似ているから、シャレで「老虎(魚)千里」としたんじゃないでしょうね。
「3期の経験を積み上げてきたオニオコゼが、さらなる飛躍につながるビッグプロジェクトをなみはずれた行動力で前進させる」 と自虐的に言っているとしたら、この人、シャレの分かるかなりの人物と見た(笑)。
そんなこんなで愛知県庁の仕事始めは楽しい会となったんですな。
1/6追記
図書館で「老虎」を調べたら、やはり「年老いた虎」以外の意味は出てこなかった。それよりも「老虎(斑)」が「不正をする官吏」というのだそうな。「不正役人を千里走らす」とは、またすげえ書き初めですな。