わたしは「本」

 ジョン・アガード『わたしの名前は「本」』(フィリムアート社)
http://filmart.co.jp/books/novel/book/
がおもしろい。昨日の日記で触れた女優のミムラさんが紹介していた本である。彼女はおそらく「電子書籍」の章を読んだのではないか。
《それから、なんの脈絡もなく、いきなり、わたしは口走った。「わたしのほうが、いいにおいがする」》
 ここでいう「わたし」というのは「Book」である。日本語で言えば「本」で、この書籍は「本」が主人公になって話を進めていく。この章の相手は「電子書籍」くん。「本」の発言にこう反応する。
「においですか?どういうことです。本ににおいなんてないでしょう」
 これに対し「本」はこう反論する。
「おいおい、きみはいったいどこにいたんだ。本にはにおいがあるにきまっているじゃないか。本に夢中になることを、“木に鼻を突っ込む”(nose in a book)というだろう?」
 そして、こんなことを言った。
「本はナツメグとか異国のスパイスのにおいがするし、古代ローマ時代、ヴェクラムでできていたときの本はサフランの香りがしていた。ヴィクトリア朝の時代にはラベンダーやバラの花びらがはりつけてあったので、その香りがした」こと主張する。
 ここからは本文を引く。
《もちろん、すべての本が同じにおいがするわけではない。しかし、本に慣れ親しんだ人の鼻は、ワインのソムリエのように、熟成した木のパルプの香りにヴァニラの香りがかすかにまじったようなにおいをかぎとることができる。(中略)わたしの古くてかびくさいにおいは、古本屋や、トランクセールや、チャリティーショップなどで本をあさる本好きの人にとっては、心温まる香水のようなものなのだ。》
 新書サイズの薄い本です。字も大きく、挿絵もたくさんはいっていますので、あっという間に読めます。紙の本と電子の本を考える上ではためになる本ですぞ。

 NHKが大河ドラマ西郷どん」の番宣をなりふり構わずやっている。夕べのBSプレミアムの「鉄道旅」も無理やり鹿児島だ。「西郷隆盛の故郷・鹿児島をめぐる」ってそのまんまやんけ。
 そんな品のないNHKの思惑などどうでもいい。興味深かったのは番組の途中に西郷さんのそっくりさんが登場したことである。ううむ、実はその西郷さん似の人もどうでもよかった。それよりも、その人の唄った歌に感動した。その人、アカペラで「田原坂」を唄ったのである。
「雨は降る降〜る 人馬は〜濡れ〜る〜 超〜すに超〜されぬ〜 田原ざ〜か〜」
 2番である。
「右手(めて)に血がた〜な 左手(ゆんで)にたづ〜な 馬〜上豊か〜な 美少ね〜ん」
 このフレーズで泣けた。
 詳しくはここで。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20120320/1332197170

 ここからはつまらない話を少しだけ。
今回の「西郷どん」に言わせてもらえれば、鈴木亮平くんでは歴史上の西郷さんとのイメージがかけ離れすぎている。そもそも長州顔だということは以前に指摘したが、せめて太眉毛にメイクするとかさ、日本人のもっている西郷さんを壊さないでほしい。そのあたりはNHKに配慮してもらいたいところだが、売国営放送だからしかたがないか(馬鹿!)。