画集を観ている。表紙は、天まで焦がさんかという紅蓮の炎に大仏殿が焼かれている図である。巨大な火焔の中におわす黄金の毘盧遮那仏は対照的に静かな表情である。その足元で右往左往する兵士どもは蟻のように小さい。
『平家物語』の「奈良炎上」(ならえんしょう)のシーンが見事に切り取られて、大仏をさいなむ火災旋風までが見事に描きこまれている。安野光雅画伯の『繪本平家物語』(講談社)である。
http://www.ehonnavi.net/ehon/86473/%E7%B9%AA%E6%9C%AC%E5%B9%B3%E5%AE%B6%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%82%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E7%89%88/
入道相国(清盛)は権をその掌中に握った。要は「平家にあらずんば人にあらず」をやってしまった。清盛ほどの人材でも権力を持つとその先が見えなくなる。いわんや凡夫をおいておや。
画伯の絵は、「清水寺炎上」「三井寺炎上」「横田河原合戦」「法住寺合戦」などの動的なものも見どころなのだが、雨のそぼ降る「大納言流罪」、九日月に桜の散る「大臣流罪」、琵琶湖の水面に夕景が映える「竹生島詣」などの静かな風景もまた良い。
ワシャは画伯の『繪本三國志』(朝日新聞出版)も持っているのだが、やはり三国志よりも平家物語のほうが憂いがあって、風趣があっておもしろい。
「ミュシャ」もそうだけど、「安野光雅」も観に行きて〜!
忙者必暇の理、なんていうことはないですかね。