終戦は明日だったのか(占守島と帰らざる夏) その1

 夕べ、NHKで「色つきの悪夢」と題した番組があった。第二次世界大戦の際の、洋の東西の映像をカラー処理したものを見せてくれた。映像そのものに目新しいものはない。どこかで見たような動画ばかりだった。しかし、それに色がついている。その分だけリアルではある。
 番組は第二次世界大戦前夜から始まり、東京湾上、戦艦ミズーリでの調印式までの歴史をドイツと日本を中心にした映像を流す。当時の国際情勢をまったく知らない素人が、20世紀前半の世界歴史を大づかみに捉えるには、分かりやすくていい。ただ、分かりやすくするために単純な展開となっているところが気になるといえば気になった。
 この番組を見た若い人たちに感じて欲しいものは、あの戦争で悪者にされたドイツ、日本だけが必ずしも悪の帝国ではなかったということである。
 19世紀末期に世界帝国を作り上げていたイギリスとフランス、及びその2国の背後にいるアメリカと第一次世界大戦を戦いドイツは敗北した。このためドイツはすべての植民地を失い、本国の13%を割譲され、莫大な賠償金を突きつけられた。ドイツ国民の負担は尋常なものではなく、塗炭の苦しみを味わうことになる。その上、イギリス、フランスは1920年代の不況の時代に、自国の植民地にブロック経済を敷くことによって英連邦内、仏連邦内だけの経済回復を目指す。アメリカは汎米主義を基盤にして南北アメリカでブロック形成を図る。
 この3大強国の自侭な経済政策が追いつめたのが、経済基盤の弱いドイツ、イタリア、日本だった。第二次世界大戦の枢軸国である。なにもこの枢軸3国が自分たちだけで暴走していったわけではない。それなりの理由が英仏米という連合国側にもあったのだ。第一次世界大戦後に醸成をはじめた国際協調路線は、経済不況と大国のブロック化のために盛り上がったナショナリズムのために雲散霧消する。イタリアのファシズムの台頭や、ドイツのナチス党の政権掌握などの孵化を促したのは、他ならない、己の帝国だけの存続しか頭にない英、仏、米だったと言っても過言ではない。
 こう考えると、第二次世界大戦後に一方的に悪者にされた枢軸3国だが、必ずしも絶対悪ではなかったということが解るでしょ。
(下に続く)