先週末にワシャの家で読書会を開いた。その時に、東京の友人のHさんから本を頂戴した。梅原勝彦『経常利益率35%超を37年続ける町工場強さの理由』(日本実業出版社)である。200ページほどの本なのでさっそく読む。
読書中読書中読書中……
おおお、これは!
Hさんも「いい本ですよ」と薦めておられたが、確かに最近読んだビジネス本の中でも秀逸な一冊だった。勝間本よりも断然に上だと思う。書かれている内容がすべて著者の実体験から出ているので説得力がある。そして何よりも著者の人となりがいい。「エーワン精密」という町工場の社長で、後継者が育っていると見るやさっさと社長職を譲って今は相談役に退いた。譲るといっても自分の身内ではないんですな。あかの他人にポンと丸ごとあげちゃった。潔い人だ。会って直接お話を伺いたいと思わせる懐の深さがある。トヨタの奥田やシャープの御手洗あたりとは人物が違うね。プラチナと金メッキほどの差がある。経営者とはかくあるべし。
金メッキは、製造拠点を海外に移し、下請会社を苛め、あろうことか従業員を切り、自分の会社の利益追及だけに汲々としてきた。外国人労働者を大量に日本国内に誘導したのもこいつらと言っていい。その結果が今の日本の現状である。
梅原さんは金儲けばかりに囚われているバカとは違った。
《私は、自分の会社の社員はできるだけ大事にしたいし、なるべくそれを具体的な形で示そうとやってきました。》
一例として梅原さんは工場の照明について言及している。エーワンでは、従業員の目を守るために、他者に比べてかなり明るい蛍光灯を使っているという。株主利益を優先する経営者ならルクスを落として経費節減をするのだろうが、梅原さんは、そんなことより従業員の目の健康を考える。ううむ、なんて素晴らしい経営者だろう。そしてこう断言する。
《株主をいくら大事にしたって、新たな利益なんて生んでくれはしません。だから私は、社員重視、株主軽視の経営だといってはばからないのです。》
梅原さんは実業を捨て、虚業にはしった日本の大企業のトップを笑っている。
本は、もちろんビジネス書としても役に立つが、人生論、読書論としても面白く読ませていただいた。Hさん、よい本をご紹介くださりありがとうございました。
(下にもあります)