とてつもない日本は末期的 その2

(上から続く)
 誰が書いたか知らないが、麻生太郎著『とてつもない日本』(新潮新書)を読んでいると奈落の底に落ちてゆくような錯覚に陥ってしまう。「夜郎自大」という言葉がある。史記に出てくる言葉なんだが、要するに自分の実力を知らないで偉そうな態度をとるバカを指してこう言う。司馬さんがもっとも嫌ったタイプでもある。
 この『とてつもない日本』というのがとてつもなく夜郎自大なんですな。
《日本は素晴らしい「底力」を持っていると確信している。》
秋葉原で集まってくださった若者の多くも、そして巣鴨にあつまってくださったご老人も、みな「底力」を持っている。》
 高齢化社会についてはこんなことを言っている。
《ウアンビーンなんていう高級なイタリア製のオートバイを購入して、逃げた女房は忘れて、合コンなんかで知り合った女性を後ろに乗せて、ダンディにツーリングを楽しむ……、そんなことができれば、高齢化社会はバラ色ではないか。》
 これを真剣に奨めているとすればアホだね。こんな面白いところもあるんですよ。
《昔、父に「官立の学校を受験したい」といったら、「バカヤロー」と一喝されたことがある。「金がないならわかるが、金のある奴が人様の税金を使うようなことをするな!おまえ役人になるのか。東大は役人をつくるための学校なんだ」という。》
 嘘の多い文章ですな。まず、麻生さんの時代に麻生さんの学力では国公立には行けません。もし、父親に身の程も知らず「国立大学に行きたい」などとほざいていたら本当のアホですな。そして《金のある奴が人様の税金を……》の部分が本当なら、麻生首相は絶対に定額給付金をもらってはいけない。極めつきは《東大は役人をつくるための大学なんだ》という個所ですな。すーっと読むと「お前は東大に行きたいかもしれないが、金持ちは税金を使って勉強をしてはいけない。金を使って私立の学習院大学で金を使って勉強して政治家になれ」とお父上は言っているように聞こえる。もしこのエピソードが真実なら親子揃ってアホだ。2009年、日本の政治は息耐えたと後世の年表には記されるだろう。