酒は飲んでも飲まれるな

 唐の詩人李白は酒呑みの代表のような人物で、終生、酒を愛し「月下独酌」、「山中對酌」、「将進酒」、「把酒問月」など酒にまつわる漢詩を多数作っている。伝説の域を出ないが、李白の最期も酒がからんでいる。月の夜に取り巻きと舟で酒を飲んでいて、水に落ちて溺れ死んだというものである。

   白髪 三千丈
   愁いに縁って かくのごとし長し
   知らず 明鏡の裏
   何れの処にか 秋霜を得たる

 老境に達した李白が、我が身を嘆じて歌った「秋浦の歌」である。
 あるいは李白、水面に映る明鏡を捉えようとして舟から転落したか。こよなく愛した酒に酔い、月影を深追いしすぎて秋浦に死すとは・・・さすが、詩人だ。

 さて、一昨日のことなのだが、蒸し暑い日だったので何人かの仲までビールを飲みに行った。いきつけの店で飲み始めたときは3人だったのだが、1人増え、2人増え、最終的には10人でビールの注ぎ合いをしてしまった。で、朝、目を覚ましたら自宅の布団の中だった。ううむ・・・店で金を払ったところまでは憶えているのだが、そこから記憶が完全に欠落している。記憶喪失だ。
 昔、酒を飲んだ翌朝に、前の日に飲み屋で出くわした上司に挨拶をするのだが、相手はワシャと飲んだことをまったく記憶していない、ということが何度も何人もあって、「おまえらアホか!」と思ったものだったのだが、今、その年齢に達してみると、本当に記憶が飛ぶ。一昨日もどうやって帰宅したのかまったく解からないのである。
 ただ右手首に痛みがあることと、自転車のハンドルとサドルが曲がっていたので、帰り道のどこかで転んだことだけは間違いなさそうだ。酔っ払って自転車を走らせていて、コケて死んじまったんじゃ、こりゃぁ詩的でもなんでもないんで、気をつけようと思いました。

 ジャーナリストの日垣さんは「酒で酔って平常心を失うこと自体阿呆だ」と仰っている。いかん!いつも平常心を失ってばかりいるワシャは阿呆だったんだ。
 公園のハナミズキツツジが咲き始めた。よし、この連休は平常心を失わない程度に、花見酒としゃれこみますか・・・