公平

 阪神・淡路大震災の避難所は、その秩序を維持してゆくために厳格なルールに基づいて運営していた。それは「公平」ということだった。公平は、避難所避難民たちの間だけでなく、避難所周辺の自宅で暮らす人たちとの間でも保たなくてはならない大原則であり、これが崩れると、避難民はクレイマーになり、放っておけば暴徒となる。基本的に、人の性、悪である。互いに己の利そうとして主張する公平は、理不尽で、身勝手で、ゆえに矛盾し、衝突する。このためリーダーは、その矛盾と衝突をどう調整できるかが問題となってくる。実際に阪神・淡路大震災の避難所リーダーの方はたいへんなご苦労をなさったに違いない。
 ある本に、公平を実現するルールとして、
(1) 平等のルール(みんなが受け取るものを等しくする)
(2) 衡平のルール(労力に応じた成果を受け取る)
(3) ニーズのルール(必要とする量を提供される量との比を一様にする)
(4) 機会均等のルール(条件をみな等しくすれば結果は問わない)
(5) 先着順のルール
(6) 抽選のルール
 があると書いてあった。リーダーは、どのような場面でどのルールを採用するのかを、きちんとみんなに理解してもらい、そのルールを厳しく守らせることが重要なのである。
 このことは災害時の避難所という特殊な環境だけの問題ではない。日常の社会の中に、現代の世界情勢の中に、実は山ほど転がっていることで、この公平が崩れるとき、人は暴走を始めるのである。
 ある意味でデモは不公平に対する抗議だし、テロだってまさに武力による強烈なアピールといっていい。
「公平」さについてだけ言えば、ブッシュ大統領小泉首相より、あのときの避難所リーダーのほうが、はるかに優秀かもしれない。