感動

 夕べ、刈谷市で開催していた9回にわたる連続講座が終わった。講師は歴史研究家の舟久保藍さんで、延べ13時間半にわたって、刈谷を語りつくした。最終回というのに大きな会議室は受講生で満員だった。この状況は初回から変わっていない。刈谷市民の「刈谷史」への高い意識が感じられた。ワシャはこのところヨーロッパの中世史に興味を引かれそのあたりを読みこんでいる。「フィレンツェ史」などもとてもおもしろいが、町の名前を冠して「史」が物語になるというのは羨ましい。
 今回は、書誌学の「在野の巨人」と言われた森銑三がテーマだった。これが強烈だった。まず、冒頭に「紀伊国屋書店映像評伝シリーズ」の「森銑三の巻」を40分程見た。このシリーズには、南方熊楠岡倉天心柳田國男寺田寅彦などそうそうたるメンバーが並んでいる。映象は無駄なく簡潔にまとめられていて、森銑三のことがきわめて解りやすい。そして感動した。それはシナリオが良かったということもあったが、なにしろ森銑三の生き様に心を動かされた。存在は知っていたんですが、その人となり、詳細な事績までは存じ上げなかった。暦が還る前に、森銑三に会えてよかった。これは間違いなく今年の「三会」に入ってくる出会いになるだろう。
 よし!腰を入れて森銑三を読んでみるか。

 講座終了後、仲間と駅前の居酒屋で軽く飲んだ。カワハギの刺身が美味かった〜。カワハギの肝とからめてポン酢でいただく。間髪を入れず、熱燗をキューッとやってごらんなさいな。極楽間違いなし。

 自宅へ戻ったのは午後10時半を回っていた。テレビを点けると、女子団体パシュートの金メダルの走行が流れている。録画だったけれど見ていて感動をした。何度も流れるのだが、何度でも感動する。大きな筋肉の塊のような欧米人に対して小柄な少女たちが奮闘した。
 スタートが感動する。彼女たちは黒と白の競技用スーツを着用していましたよね。これが足と手の部分が伸縮性を持たせるためか、黒字に白の切れ込みが入っているでしょ。模様だけだったかもしれないけど。この部分が遠目には黒鉄色に見えるのだ。その黒鉄色がスタートラインに三角形の隊形を組む。ワシャは黒鉄色のゼロ戦の編隊を想起した。日本海軍では三機編隊でごついグラマンなんかと空中戦でやりあってきた。70年の時を超えて闘う集団がそこにあった。
 オランダチーム、確かにパワーはある。しかし三人の動きがバラバラだ。腕の動きを見ても、日本チームは計ったように同じ動きをしている。そして先頭走者の背後に見事に隠れて走っている、日本人というのはチーム戦になると強い。それは先の大戦からも脈々と流れる日本人の特徴であろう。
 華奢な少女たちがごついオランダを振り切って次々にゴールをしていく。愛国者のオジサンは泣きましたぞ。