横綱稀勢の里

 脚本家の内館牧子さんがエッセイ集を出している。『あなたはいないけど…』(NHK出版)である。その中にこんなフレーズがあった。
《誰しも苦境に立つと、なんとか這い上がろうと努力し、あがき、策を弄する。それも必要であろうが、最低限の幸せである「明日の米」を確認したら、あとは夕涼みをするに限る。》
 この人が「夕涼み」というと、ワシャには両国あたりの裏通りが脳裏に浮かぶ。

 今朝の朝日新聞に内館さんの「稀勢の里」エールが載っていた。遅咲きの横綱に内館さんはこう言った。
《ダーイジョブ!ダイジョブ!バスがダメなら飛行機があるんだから》
 稀勢の里、何台ものバスに乗り遅れた。が、それを見送りつつ、くさらず精進を続けた。そしてやってきた飛行機に乗って、ついに横綱に到達した。
 内館さんの文章の行間から、喜びがあふれている。そんな文章を読んで、ワシャもうれしい。