蓮池薫さんのお話を聴いて、『北朝鮮の日常風景』という写真集のことを思い出した。
http://www.amazon.co.jp/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AE%E6%97%A5%E5%B8%B8%E9%A2%A8%E6%99%AF-%E5%AE%89-%E6%B5%B7%E9%BE%8D/dp/4861870348
たしか「東アジア」の棚のどこかにあったはずだが……。
探してみると、誇りにまみれてあった。2007年に韓国の人が発表したものである。写真は、1997〜2003年ごろの北朝鮮の地方都市の風景であった。制限された当局の管理下であれば写真は撮影できる。そういうものは多く出回っている。しかし、あの国の本当の日常を撮影することはなかなか難しい。韓国人の写真家は、苦労して隠し撮りで北朝鮮の生活の断面を切り取ってきた。
ページを繰ると、そこには懐かしい風景が展開する。どうだろう。昭和初期の日本の田舎や炭鉱町がそのまま冷凍保存されているような、そんな感じかなぁ。道路はもちろん未舗装で、自動車の姿は見られない。そのかわり土の道を牛車が行きかっている。そこには極貧の国家が写しだされている。南の韓国とは比べようもない。失敗国家のありさまが露呈されていた。
それでも写真家の視線にはやさしさがあって、そこに映し出される人々の表情は真面目だ。この人たちに罪はない、それは間違いない。
繁栄の日本に生まれ住んで、ある日突然、こんな風景の中に悪意のタイムスリップを強制された拉致被害者たち、北朝鮮の指導者の罪は極めて重い。