横綱失格

 北の湖理事長が急逝されて、白鵬という異邦人はどこまでそのことを悼んでいるのか。悔やみの言葉を口にしている。しかし襟を正すわけでもなく、稽古が終わった後の、まさにだらしなく襟元が寛いだままの浴衣姿でのインタビューを受けていた。
「ちょっと待ってくれ。居ずまいを正すから」
 コメントが欲しくて仕方のない記者連中などいくらでも待たせておけばいい。その上で、理事長へ言葉をおくる。角界の第一人者なんだからそれくらいは対応しろよ。
 もう一点、昨日の福岡国際センター。嘉風豪栄道の仕切りの時のことだ。西の花道の奥に待機する白鵬の姿が映し出された。いつものことである。首を動かしたり肩を動かしたりして力士たちはここで緊張をほぐす。その時、白鵬が首を左に向けて「ベッ!」と唾を吐いた。おいおい、ここはお前の待機場所かもしれないが、お客さんも出入りをする通路だぞ。お前のまわりにはかしずく家来が何人もいるじゃないか。付け人にティシューか何かを用意させてそれで処理をしろよ。ああ、こいつは何も考えていないんだ……と情けなくなった。
 結びの一番で、大関照ノ富士が2分49秒の長い相撲をせいして白鵬を寄り切った時、思わず座布団を投げていた。