頭にこびりつくもの

 「源氏物語」に六条御息所という女性が登場する。とうは立っているが気品のある美しい人である。この人に光源氏がちょっかいをかける。ワシャはこの軽率な男が嫌いなのだが、紫式部が主人公にしてしまったから仕方がない。
 女ったらしの光源氏、年齢が高いことを理由に拒んでいた六条を籠絡し、割りない中になってしまう。
 しかし、色ボケ光源氏は、六条の目の届くところで、すぐに若い女人に手を出すのだった。そのことに怒り狂った六条は生霊となって、光源氏が女人とむつんでいるところに現われるのだ。また出産を控えた葵の上の枕辺にも立ち、葵の上を苦しめるのだった。
 六条は生霊である。六条は葵の上に嫉妬して、その想念が結実して妖(あやかし)となった。そして空を超えて葵の上に祟りをなしている。これは被害者と加害者がはっきりしている。
 しかし、はっきりしないものもある。たとえば、被害者のほうが一方的に妖(あやかし)をイメージの中で創り上げてしまうというものである。これは加害者がいるというわけではなく、被害者の想い込みによるところが大きく、被害者が想い込みを切り替えない限り、ずっとその妖(あやかし)はまとわりつく。そりゃそうですよね。自分の脳で創り出しているんだもの。