グリム童話だったか、教科書で読んだような記憶があるが、裕福な女が「私が貧乏になることなど決してこない。この指輪を再び見ることのないのが確かなように」と豪語して、身に着けていた指輪を海に投げ捨てた。
数日後、裕福な女の家の女中が魚を買い求め、腹を開くと件の指輪が出てきたので、女主人に見せる。女は、それが自分の捨てた指輪であることを理解し、青ざめるのだった……というような話であったような。
似たような話は、「ハルパゴスの凄み」
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20140827/
の時にふれたヘロドトスの『歴史』の中にも登場するから、よくある話なのかもしれない。
6年前にワシャは京都で1冊の本を失くした。子母澤寛『新選組異聞』(中公文庫)である。たまたま仲間と観光で京都駅の西にあるホテルに宿泊していた。旅行先にはその地にまつわる本を何冊か持っていく。その時は『新選組物語』『新選組始末記』と合わせて3冊を鞄にしのばせた。いわゆる子母澤寛の「新選組三部作」といわれるもので、3巻そろえて古本屋で入手したものである。
それを朝風呂に浸かりながら読んでいて『異聞』を何の気なしにタオルラックに乗せて忘れてしまった。気がついたのは平等院だったかなぁ。取りに戻ろうかとも思ったけれど、入手金額を考えると、交通費のほうが高くなる。団体行動を乱すのもためらわれたし、「また買えばいいや」と思って6年が過ぎた。
昨日、仕事帰りに地元の「BOOKOFF」に立ち寄った。ガキはビービーと泣きわめき、親はそれを放置している。店員は仲間同士で私語をしながら、立ち読みの客を押しのけ配本をして悪びれない。まったく最低の本選びの環境であり、店員モラルも地に墜ちている。でもね、目のきかない店員のおかげで拾いものもたくさんあるから止められない。
昨日はとくに掘り出し物はなかった。「禅」「司馬遼太郎」「歴史」関連の本を10冊拾っただけである。ただ、その中に『新選組異聞』があった。いやー(笑)、忘れてきた本だったので、原価で買うのは悔しく、今まで様子を見ていたのだが……というか古本屋などでは探していたんですよ。でもなかなかなかった。それが6年ぶりの再会となったのである。
およよ、よく見れば鉛筆でメモ書きが!あ!!これはワシャの筆跡ではないかああああ!!!回り回ってワシャの手元に戻ってくるとは、奇跡が起こったか。
そんなことはありませんね(笑)。